銀座を護った影法師――鈴木龍馬と「銀座警察」の遺風(1950〜2002年)
戦後の東京・銀座には、法とは別の秩序があった。「銀座警察」と呼ばれたその存在の中心にいたのが、高橋輝男――住吉会住吉一家大日本興行の初代会長である。彼は夜の銀座の揉め事を一手に引き受け、警察が出る前に決着をつけた。芸者もクラブのママも、政治家すらもその裁定を仰ぎ、彼の背中に秩序を見ていた。
その高橋に仕えた若者が鈴木龍馬である。早くから修羅場を経験し、組織の最高顧問に上り詰めた彼は、高橋譲りの義理と仁義を胸に、住吉一家を支え続けた。だが2001年、赤坂で発生した発砲事件をきっかけに彼は破門処分を受け、翌2002年10月、自宅の浴室で割腹自殺を遂げる。その死に様は、もはや昭和の遺風そのものであった。
高橋のように銀座を護り、任侠の誇りを貫いた鈴木の姿は、現代には稀な男の美学だった。銀座の灯が揺れるたび、その背中を知る者の胸には、あの影法師がよみがえる。
No comments:
Post a Comment