Saturday, April 26, 2025

水をつなぐ約束――日本の水道事業の岐路(2020年代)

水をつなぐ約束――日本の水道事業の岐路(2020年代)

日本の水道事業はいま大きな持続性の危機に直面している。高度経済成長期に整備された水道管や施設は耐用年数(40〜50年)を超えつつあり、全国では水道管の約17%がすでに法定耐用年数を超えている。今後20年以内には約40%に達する見通しだ。

また地方を中心に水需要が減少し、利用料収入が減っている現状も深刻である。維持管理費は減らせないため財政がひっ迫する構図が広がっている。さらに水道事業を担う技術者たちも高齢化し、今後10年で約4割が定年を迎えるとされ専門人材の確保が急務となっている。

加えて日本の水道料金は世界的に見ても非常に低水準であり安価に抑えられてきた結果必要な設備更新資金を十分に確保できていない。災害リスクも高まっており地震や洪水による施設被害に備えた耐震化防災対応の遅れが顕在化している。

こうした背景を踏まえ政府は広域連携や民間委託(コンセッション方式)の推進を打ち出している。特に2040年までに全国水道の3割以上を広域化するという目標を掲げている。

仙台市の挑戦――広域連携と災害に備える水の盾

仙台市では近隣自治体と手を結び水道事業の効率化に取り組んでいる。施設の統廃合や運営の一体化を進めることで運営コストを抑えつつ限られた人員でも安定した給水体制を維持する仕組みを整えようとしている。

東日本大震災で得た教訓を生かし仙台市は災害に強い水道網の整備にも力を注いでいる。特に耐震性の高い水道管への更新を推進し非常時に対応できる給水拠点を各地に整備してきた。この取り組みは全国の自治体にとっても先進的なモデルとなりつつある。

浜松市の決断――民に託した下水道の未来

浜松市は2018年下水道事業に日本で初めてコンセッション方式を導入した。市が施設を所有しながら運営と維持管理を20年間にわたって民間企業に委託するこの仕組みは全国的な注目を集めた。

この取り組みは民間資金を活用して市の財政負担を軽減することを目的とすると同時に民間企業のノウハウによって運営の効率化とサービスの質の向上を目指している。さらに災害対応においても柔軟な体制を築くことが期待されている。浜松市のこの試みは人口減少時代における水道下水道事業の新たな運営モデルとして高く評価されている。

参考情報

- 厚生労働省「水道事業の現状と課題」
- 仙台市水道局「仙台市水道ビジョン」
- 浜松市下水道部「コンセッション方式による下水道事業運営」
- 総務省「地方公営企業等の広域化共同化に関するガイドライン」

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