Saturday, September 13, 2025

都市の闇に轟いた爆音 ― 三菱重工ビル爆破事件 1975年2月

都市の闇に轟いた爆音 ― 三菱重工ビル爆破事件 1975年2月

1974年8月、東京都丸の内の三菱重工本社ビル前で爆破事件が発生し、死者8名、負傷者376名という惨事となった。犯行は「東アジア反日武装戦線」によるもので、日本の重工業を象徴し、防衛産業とも結びつく三菱を「帝国主義の象徴」と見なして狙った。高度経済成長の象徴である大企業を標的にした点で、日本が直面する新しい都市型テロの姿を鮮烈に示した。

背景には、急速な経済発展の陰で深刻化した公害や格差、さらにベトナム戦争をめぐる国際政治情勢があった。資本と権力の結節点を攻撃するという犯行は、単なる犯罪ではなく、時代に対する過激な反逆のメッセージでもあった。事件後、テレビや新聞は連日大きく報じ、ワイドショーも娯楽的な話題から一転して爆破事件を扱い、市民の不安を増幅させた。

都市の真ん中で誰もが犠牲となり得る現実を突きつけたこの事件は、社会に強烈な衝撃を与えた。同時に、学生運動から派生した一部の過激派が武力闘争に踏み出した象徴でもあり、後に続く連続企業爆破事件の端緒となった。三菱重工爆破は、高度経済成長の影、政治不信、国際的緊張が交錯する中で、日本社会に潜むひずみを暴き出す歴史的事件であった。

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