北海道上磯町「リサイクル循環工業特区」と2003年前後の時代背景
2000年代初頭、日本では「構造改革特区」をてこに、地域の実情に合わせた規制の特例を設けて新産業の芽を育てる動きが広がっていました。2003年2月20日発行の業界誌は、提案中の特区のひとつとして「北海道上磯町『上磯町リサイクル循環工業特区』」を挙げています。これは、福岡県大牟田市の環境産業特区、島根県益田市のバイオ燃料特区などと並ぶ、循環型産業の地域実装を狙う構想群の一角でした。
当時の特区提案では、リサイクルや廃棄物処理のボトルネックになっていた規制の見直しが焦点です。具体的には、廃棄物処理法に関し「廃棄物の性状に応じた施設許可手続の合理化」を求める要望が明記され、現行の許可区分(一般廃棄物/産業廃棄物)をまたぐ運用の柔軟化など、地域の循環システムを回すうえでの"摩擦"を減らす狙いが読み取れます。誌面には「一廃・産廃のいずれかの処理施設の許可を得ていれば受け入れ可能とする」類の整理を示すくだりもあり、上磯町のような"循環工業"を掲げる提案の文脈と響き合っています。
この流れの上位には、小泉内閣が2002年度に創設した「構造改革特区」制度があります。制度は、全国一律の規制を地域限定で外し、成功すれば全国展開する「規制の実験場」として設計され、2003年に基本方針が閣議決定されました。地域活性化と規制改革を同時に進めるための政策ツールという位置づけです。
なお、上磯町は2006年2月1日に大野町と合併し北斗市となりました。合併後も"資源循環"の旗は引き継がれ、北斗市は「地域循環型社会形成推進地域計画」を策定するなど、分別・再資源化の高度化や市民参加を進める取り組みを続けています。上磯の特区構想は、こうした道南圏の循環型社会づくりの文脈に連なる試みとして理解できます。
総じて言えば、「上磯町リサイクル循環工業特区」は、構造改革特区という制度の追い風のもと、廃棄物処理の許認可や受け入れ範囲の運用を見直し、地域内で資源のループを回す"循環工業"を芽吹かせようとした時代の産物でした。規制の合理化で実証のハードルを下げ、地域の実験から全国標準へ――当時の政策思想が、上磯の提案にも濃く反映されていたのです。
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