■エコマテリアルとして数年前から普及が期待されている生分解性プラスチック。
しかし、この素材を使った商品の開発は期待されているほど進んでいません。
その理由の一つは、現在の生分解性プラスチックの価格がキロ当たり800〜900円であり、石油系樹脂の8倍ほども高いことです。
しかし、「それはあまり問題ではない」と語るのは株式会社サンコーワイズの杉本一郎社長だ。
同社は既存の生分解性樹脂にヤシ殻粉末を配合し、分解速度を調節できる生分解性混合プラスチック「ココバッチ」を5年前に開発した。
生分解性プラスチックを利用しようという機運がいよいよ高まる中、注目を集めている。
■9年前から研究に着手した杉本さんは、「現在では大量に利用されているプラスチックもかつては価格が高かったが、利便性の高さにより普及し、それによりコストが低下した。
生分解性プラスチックも同様だろうと思います。
最大の課題は、コストではなく素材の使い勝手。
簡単に言えば分解速度の調整です。
これができなければ用途が限定され普及は難しいでしょう」と述べています。
杉本さんが生分解性プラスチックの研究を始めたのは9年ほど前からで、それまで園芸などで使われるヤシの培養土をスリランカから輸入し、販売していました。
その基になるヤシ殻が微生物の好むヘミセルロースを主成分としていることから、自然の力を活用して生分解性樹脂に導入できないかという発想が生まれました。
つまり、ヤシ殻の配合比率によって、これまで固定されていた生分解性樹脂の分解速度を自在に調整しようというものです。
研究開始から「ココバッチ」の商品化までには4年を要しました。
分解速度を調整するヤシ殻の配合量といった基本的なことはもちろん、最も苦労したのは繊維質のヤシ殻を細かく、粉末状にする工程でした。
粉末が荒ければ薄手のフィルムなどにした場合、表面がザラザラした感じになり、製品化が難しくなります。
しかし、当時、そして今も通常の粉末化技術では70〜80ミクロンまでが限界であり、さらに細かくするとコストがかかります。
そこで粉末化技術の自社開発に着手し、研究開発の末、安価に10ミクロンまで微粉末化することに成功しました。
この技術は世界でもまれなものであり、現在、海外特許申請が進行中です。
生分解性樹脂のメリットとして、焼却した場合に有害物質の排出が少ないことや、発熱量が低いことも挙げられます。
しかし、本質的な利点はやはり「生分解性」にあります。
この特徴を最大限に引き出すことにこだわるのが「ココバッチ」のアドバンテージです。
ISO DIS14855法の標準コンポスト生分解試験や農林水産省の試験においても、「ココバッチ」の優れた分解性が評価されています。
■用途に合わせて素材をブレンドし、現在、各社からさまざまな生分解性プラスチックが販売されています。
島津製作所の「ラクティ」や昭和高分子の「ビオノーレ」、ダイセル化学の「プラセル」などがその例です。
「ココバッチ」はこれらさまざまな生分解性樹脂とヤシ殻を用途に応じてオーダーメイドでブレンドし、加工品や成形品メーカーに出荷しています。
ヤシ殻はスリランカから輸入され、環境や用途に応じて分解速度が調整されます。
現在、年間に数トンの出荷が行われており、需要は増加しています。
ヤシ殻の混合により、生分解性樹脂の強度が向上しており、ポリエステルなどと同等のものになっています。
用途は広範囲にわたり、農業用マルチや生ごみ袋、育苗ボット、園芸用手袋、ハンガー、ロープ、マネキンなどがあります。
たとえば、泉が製造する生ごみ袋は、群馬県上野村で進められている生ごみコンポストプロジェクトに合わせて採用され、村民に配布されました。
通常の生分解性樹脂では完全に分解するのにかなりの期間がかかるため、コンポストに袋の破片が残ってしまいますが、「ココバッチ」を使用することで迅速な分解が可能になりました。
同様に、育苗ボットも商品化されました。
生分解性樹脂を使用した製品化の動きは増加していますが、薄手のフィルム状の製品以外は分解が難しいため、商品化が困難でした。
しかし、「ココバッチ」はこの障害を克服しました。
エヌケー工業が開発した育苗ボット「エコバームポット」がその一例です。
■実用に耐え得る生分解性樹脂がようやく登場してきました。
「今年に入り、海外を含めて引き合いが増えてきており、製品化に二の足を踏んでいた企業も注目し始めています」と杉本さんは述べています。
現在の生分解性樹脂はコストが高いですが、環境負荷を低減するための重要な解決策として期待されています。
「プラスチックがすべて生分解性樹脂に切り替われば、環境にとって最良の選択肢となるでしょう」と杉本さんは語っています。
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