"川崎市の経済復興と都市計画"。
戦後の経済復興時に京浜工業地帯の中核として発展してきた川崎市は、人口約120万人を抱える神奈川県第2位の大都市であるが、工場が集中する南部は住工混合による深刻な公害・環境問題に見舞われた地域でもある。また、近年の産業の空洞化や経済不況の影響も大きく、川崎市では「地球市民の時代における人間都市の新たな創造」を目標に、その実現のための総合計画「川崎新時代2010プラン」を93年3月に策定。都市づくりの基本方向として「福祉や教育の充実」「快適な環境の創出」「確かな都市機能の形成」「産業の活性化」「分権型社会の実現」の5つを掲げ、21世紀に向け行政と市民が将来の都市像を共有しつつ、工業の活性化、臨海部再編整備、住工混在の解消を図ることで市民生活から産業まで、自然環境と調和した資�
��循環型社会の構築を目指している。
"エコタウン構想と地域指定"。
川崎市では、この計画に基づき、事業者に対しては情報提供や各種助成制度の適用、企業間連携を支援。また、関連産業育成のために、中小企業を資金・技術・人材などあらゆる面からサポートしてきた。これらの取り組みが評価され、97年7月に通産省のエコタウン事業の地域指定を受けたことから「川崎市環境調和型まちづくり(エコタウン)構想推進事業」に取り組んでいる。
"ゼロ・エミッション工業団地の整備"。
エコタウン構想の核となるのがゼロ・エミッション工業団地で、川崎区水江町にある8本銅管の社有地(約8.4ヘクタール)を対象に、環境事業団の主導により、川崎区の産業道路以南の臨海工業地帯を構成する中小企業に誘致を呼びかけ、99年1月には事業協同組合が設立された。
"ゼロ・エミッション工業団地の具体的な取り組み"。
環境事業団では、住工混在地域における中小企業の産業公害防止などを目的とした工場・事業所の移転手法である「集団設置建物建設譲渡事業」を実施してきたが、個々の企業では資源循環に向けた対策などを進めることが困難な中小企業を対象に、その集団化を図り、ゼロ・エミッション工業団地の整備を支援する新たな建設譲渡事業を創設。プロジェクトに係る事前調査から設計、各種認可の取得、土地確保、工業団地の造成、工場・事業所の建設までの業務を一貫して引き受けており、その最初の事業として川崎市が選ばれた。現在、組合には15社(最終的には20社余りの予定)が参加しており、2001年の操業開始を目指し事業計画の具体的な詰めの作業が進められている。
"エコタウン事業のアプローチと評価"。
「ゼロ・エミッションという最終的な目標は同じですが、アプローチの方法が大きく異なる」との言葉通り、他地域のエコタウン事業の多くが廃棄物削減を目指したごみ政策を重視しているのに対し、川崎市の場合は産業政策など、空洞化や不況下で落ち込む工業地帯活性化の起爆剤として位置づけている。
"持続可能な産業システムの構築"。
工業地帯という特性上、周辺には港湾、鉄道、運河など物流インフラが整備されているほか、これまで川崎市のモノづくりを支えてきた基盤技術企業が保有するエネルギー供給施設やリサイクル技術が集積されており、これらを有機的にリンケージさせていくことによって、団地内企業だけでは対応しきれない部分をカバー。
"エコタウンの波及効果と将来展望"。
「まずは工業団地からゼロ・エミッションに取り組み、その経験や情報を市内外に広く提供することで、地域全体にゼロ・エミッションの輪が波及していくことを目指しています」との言葉通り、将来的には団地全体でISO14001の認証取得も検討し、競争力(=持続性)のある資源循環型産業システムを構築するという。いくら環境保全や資源循環を訴えても、経済性のないシステムでは持続していくことは難しい。その点、まちの発展と同時に環境・公害問題を経験してきた川崎市には、公害防止やリサイクル技術が多く蓄積されており、地域の特性を活かした手法として注目される。
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