Saturday, October 31, 2026

霧のシティ 信用が逆流する夜 ロンドン金融市場と恐慌 19世紀

19世紀のロンドンは、産業革命によるイギリスの経済的優位、巨大な貿易量、ロンドン港、銀行網、証券市場を背景に、世界経済の金融中枢へ成長した。イングランド銀行によれば、19世紀初頭にはアムステルダムに代わって世界金融の中心となり、1850年代以降は鉄道株や外国証券も大量にロンドン市場へ集まった。 マルクスが資本論第三巻で注目したのは、この繁栄を支える信用の二面性である。手形、預金、貸付、銀行信用が発達すると、同じ貨幣が何度も決済に使われ、現金そのものが少なくても巨大な取引が可能になる。そのため貨幣資本は、生産現場から離れて、それ自体が価値を増殖させているかのように見える。添付資料でも、信用制度と貨幣資本を資本主義の重要な問題として扱っている。 しかし、信用は繁栄を加速させる一方、恐慌では逆方向に働く。返済への不安が生じると、貸付が縮小し、手形の割引が難しくなり、誰もが現金を求める。マルクスは、信用が縮小する局面では通常の取引が減少する一方、資本家側では貨幣への需要が急増すると論じた。つまり、昨日まで信用によって結ばれていた市場が、今日には現金を奪い合う市場へ変貌する。 その劇的な実例が1866年のオーヴァレンド・ガーニー恐慌である。当時最大級の割引商会だった同社が5月10日に支払いを停止すると、ロンドンの金融市場に恐慌が広がった。イングランド銀行は同社そのものの救済を拒んだが、健全な銀行や仲介業者への資金供給を拡大した。この経験は、後の中央銀行による最後の貸し手機能の形成にもつながった。ロンドンの繁栄は、信用という見えない糸で世界を結び、その糸が切れた瞬間には、世界規模の不安を一斉に伝える仕組みでもあったのである。 関連情報 イングランド銀行 https://www.bankofengland.co.uk/about/history マルクス『資本論』第三巻 https://www.marxists.org/archive/marx/works/1894-c3/ch28.htm

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