円地文子は、戦後社会の価値観に容易には同化しない女性の孤独や欲望を描き続けた作家である。資料では宮本百合子の戦後文学を認めつつも、時代の大義名分に沿う文学とは異なる存在として円地を捉え、廃園では、周囲から理解されず孤立していく女性の姿に注目している。そこには、敗戦後の社会変化の中で、家族や共同体から疎外されながらも、自分の内面を手放さない女性像が浮かぶ。 廃園は1946年6月に発表された作品で、円地が子宮癌の手術を受ける数か月前に書かれた。戦後の円地文学を論じた研究では、この時期を、戦前の家父長制的社会を女性の側から語り直し、間接的な自己表出を模索した重要な時期と位置付けている。円地はその後、ひもじい月日や女坂などによって作家として再評価され、抑圧された女性の自我や情念を描く戦後女性文学の重要な存在となった。 廃園という題名は、戦争によって崩れた社会だけでなく、かつて女性を囲っていた家や制度の秩序が失われた後にも残る孤独を思わせる。円地文学の特色は、女性解放を単純な前進として描くのではなく、自由になったはずの女性がなお抱える欲望、孤独、記憶の深部まで見つめた点にある。
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