廃棄物は資源か ― 東京都・新日鉄が挑む「ごみ固形燃料」社会(RDF)―2001年
2001年当時、日本のごみ処理政策は大きな転換期にあった。バブル経済崩壊後の停滞した経済の中で、自治体はごみの減量化・リサイクルの推進と同時に、焼却施設のダイオキシン対策という重大な課題に直面していた。1999年に施行された「ダイオキシン類対策特別措置法」によって、既存の焼却施設の改修や新設には膨大なコストがかかり、自治体単独での対応が困難になっていた。
こうした背景のもと、注目されたのが「RDF(Refuse Derived Fuel=ごみ固形燃料)」である。RDFとは、可燃ごみを乾燥・破砕し、固形化したもので、見た目はペレット状やブリケット状。通常の焼却に比べて安定的な燃焼が可能で、燃料としてのエネルギー回収効率も高く、さらに焼却時のダイオキシン発生を抑制できるという利点があった。
東京都と新日本製鐵(現・日本製鉄)は、このRDFに早くから注目し、都市と製造業が手を組む形での社会実証に踏み切った。都内の自治体で回収・加工されたごみをRDFにし、それを新日鉄の高炉でコークス(石炭を乾留した燃料)代替として活用する試みである。製鉄業はエネルギー多消費産業であり、特に高炉の稼働には膨大な熱源が必要とされる。そこに都市の廃棄物をエネルギー源として組み込むという発想は、「ごみは厄介者」から「資源」への意識転換を促す先進的な実践であった。
この試みにはいくつかの社会的・政策的意義があった。まず、ごみ処理と産業利用の垣根を越えた"協働"という点である。従来、自治体の廃棄物処理と企業の製造工程は分断されていたが、RDFの導入はこの境界を打ち破り、都市と産業が一体となった"循環型社会"の構築に寄与した。次に、コストの分担と技術の融合である。新日鉄はRDFを使うことで石炭使用量を減らし、コスト圧縮が可能となり、自治体側は焼却炉の新設やダイオキシン対策の一部を回避できる。
しかし一方で、RDF導入には課題もあった。異物混入や品質の安定性、輸送コスト、設備改修の必要性などが議論となった。また2000年代半ば以降、廃プラスチックなどの燃料化をめぐるLCA(ライフサイクルアセスメント)評価が進む中で、RDFによるエネルギー回収が本当に環境負荷低減につながるのかという根源的な問いも浮上した。
とはいえ、この時期に東京都と新日鉄が取り組んだRDFプロジェクトは、資源循環と都市と産業の協働の可能性を提示した重要な実証例であり、後の廃棄物エネルギー化政策(サーマルリサイクル)にも大きな影響を与える先駆けとなった。廃棄物が「社会の資源」として再び見直され始めた時代の象徴的な動きである。
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