江戸川区市民の太陽光発電所計画 ― 市民主体で始まる再生可能エネルギーの萌芽(1999年・東京都江戸川区)
1990年代後半、日本では地球温暖化問題が社会的に大きく取り上げられた。1997年の京都議定書で温室効果ガス削減が国際的に約束され、各地で「地球温暖化防止行動計画」が策定され始めた時期である。特に都市部では、エネルギー消費の削減と再生可能エネルギー導入が市民運動や自治体政策の重要課題となっていた。
江戸川区の市民グループ「足元から地球温暖化を考える市民ネット・えどがわ」が、地域寺院・寿光院に太陽光発電所を設置した試みは、まさにその潮流を体現していた。出力は5kW程度と小規模ながら、客殿の電気使用に供し、余剰電力は電力会社に売電する仕組みを導入。これは「自家消費+売電」という当時としては新しいビジネスモデルであり、後の固定価格買取制度(FIT)を先取りする形だった。
資金の多くは東京都や自治体の助成金、そして市民からの寄付で賄われた。従来の公共事業中心のエネルギー政策に対し、市民自身が資金を出し合い地域で発電所を運営する「市民電力」の萌芽として注目された。住職や市民が「償却後には第2、第3の発電所も」と語り合う様子は、地域共同体が未来のエネルギーを担う姿を象徴している。
この試みは、地球温暖化対策の一環であると同時に、地域社会の結び付きや信頼を基盤とする「参加型エネルギー社会」の可能性を示した。大規模電源が支配的だった日本のエネルギー供給構造に、市民主体という新たな方向性を提示した点で画期的であり、2000年代以降の再エネ普及の先駆けといえる事例となった。
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