環境の恵みを泡に変えて―廃果実発泡酒と食の循環 2007年

環境の恵みを泡に変えて―廃果実発泡酒と食の循環 2007年

2000年代半ばの日本では「もったいない運動」を背景に、食品廃棄の削減が社会的課題として注目され始めていた。農産物の規格基準の厳しさから市場に出せない果物が大量に廃棄される現実があり、その有効活用が求められていた。神奈川県厚木市の地ビールメーカー、サンクトガーレンはこうした状況に応え、規格外の長野県産リンゴを使った冬季限定の「アップルシナモンエール」を発売した。捨てられるはずの果実を活用し、新しい価値を生み出すこの試みは、フードロス削減と地域資源の循環利用を同時に実現した点で画期的であった。さらに翌年には、地元神奈川県産のみかん「湘南ゴールド」を利用した発泡酒の開発も計画され、地産地消の象徴として注目を浴びた。当時はまだSDGsという言葉は普及していなかったが、�
��境意識の高まりとクラフトビール市場の拡大が重なり、消費者にとって「物語を持つ商品」として大きな話題となった。この動きは、後のフードテックやアップサイクル産業の萌芽にもつながり、食品廃棄を資源に変える社会的な価値観を広める役割を果たした。