お雇い外国人 誰が一番偉いのかと問われた夜――嘉永年間 民主主義を語った外人ラナルドマクドナルド(嘉永年間)
嘉永年間の日本は、武士を頂点とする身分秩序を政治の前提とする社会であった。異国船来航の際、役人たちが艦長の階級や地位を執拗に確認したのは、交渉とは身分の釣り合いを測る行為だと考えられていたからである。その場にいた外人ラナルドマクドナルドは、こうした問いに対し、西洋社会では人民こそが権威の源であり、役職や階級は一時的に委ねられた役割にすぎないと説明した。しかし武士たちは、この考えを理解できず、「では一番偉い者は誰か」と問い返す。そこには、権威は必ず頂点に集約されるという身分社会の前提があった。民主主義という思想は言葉としては翻訳できても、法の前の平等や個人の自律を欠いた社会では実感を伴わない。マクドナルドは論争を挑まず、自らの社会の仕組みを語ったにすぎな
いが、その説明は日本側にとって秩序を揺るがしかねない不安な思想として響いた。この会話は、幕末直前の日本において、価値観そのものが共有できない断絶が存在していたことを象徴的に示している。
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