物語は巡礼路を行く。十四世紀末 一三八〇年代から一四〇〇年頃
カンタベリー物語は、十四世紀末のイングランドでジェフリー・チョーサーによって書かれた物語集であり、中英語による本格的文学の出発点とされる。ロンドンからカンタベリー大聖堂へ向かう巡礼の道を舞台に、身分も性格も異なる人々が道中で物語を語り合うという枠組みを持つ。騎士道物語から猥雑な笑話まで、語りの内容は多様であり、それぞれが語り手自身の価値観や社会的立場を映し出している点に特徴がある。物語そのものと同時に、語る人物の矛盾や偽善が浮かび上がる二重構造が、鋭い人間観察を生み出している。作品は未完に終わったが、その断片性は多声的な中世社会の現実をかえって鮮明に示しており、写本ごとに順序が異なる点も含め、現在まで解釈の更新が続く古典である。
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