東京・都市砂漠と熱公害問題の顕在化―1975年5月 都市砂漠と熱公害問題は、1970年代の都市化が生んだ新しい環境問題である。資料では、1975年5月15日号に「都市砂漠と熱公害の二つの調査結果発表・・・都市緑化を緊急に」とあり、都市のコンクリート化やアスファルト化が、単なる景観の問題ではなく、気温上昇や生活環境の悪化を引き起こす深刻な課題として認識されていたことがわかる。 「都市砂漠」とは、都市の中から土や草木、水辺が失われ、人工物だけで覆われた状態を指す言葉である。ビル、道路、駐車場、工場用地が増える一方で、樹木や農地、空き地が減少すると、都市は乾いた硬い空間になっていく。そこでは雨水が地面にしみ込みにくくなり、日中に蓄えられた熱が夜間にも残りやすくなる。 この現象は、現在でいうヒートアイランド現象に近い問題である。アスファルトやコンクリートは太陽熱を吸収しやすく、植物のように水分を蒸散して周囲を冷やす働きが少ない。そのため、緑の少ない都市部では周辺地域より気温が高くなり、夏場の不快感、冷房使用量の増加、大気汚染の悪化などにつながった。 この時期に都市緑化が急務とされたのは、緑が単なる装飾ではなく、都市の温度を下げる環境装置として再評価されたためである。街路樹、公園、屋敷林、河川敷、工場緑地などは、日陰をつくり、地表面の熱を抑え、水分の蒸発によって周囲を冷却する役割を持つ。都市の中に緑を増やすことは、生活環境を守るための実用的な対策だった。 また、都市砂漠化は人間の感覚にも影響を与えた。緑のない都市空間は、暑さや乾燥だけでなく、圧迫感、疲労感、季節感の喪失をもたらす。1970年代の都市緑化論では、公害対策や温度調整だけでなく、人間らしい生活環境を回復するという意味も強く意識されていた。 このように都市砂漠と熱公害問題は、都市の発展そのものが新たな環境負荷を生むことを示した重要なテーマである。都市緑化は、失われた自然を単に飾りとして戻すのではなく、熱、空気、水、景観、人間の快適性を総合的に回復するための政策として位置づけられるようになった。
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