井の上孝彦と稲川会横須賀一家 ― 任侠と仏道のあいだで(1947–2013)
井の上孝彦(1947–2013)は、稲川会横須賀一家の幹部であり、仏道にも深く傾倒した異色の任侠者である。熊本県出身の彼は、若年期から荒れた生活を送り、横浜での土木作業を経て稲川会横須賀一家へ加入。猛々しい性格から「鬼の井の上」と呼ばれたが、刑務所で仏教に出会い、以後は倫理と信仰に基づく組運営を目指すようになった。覚醒剤や恐喝の排除、弱者救済を掲げたその姿勢は、地域社会や組織内で尊敬を集めた。著書『修羅の自叙伝』やVシネマ『修羅之魂』でもその人生が描かれている。稲川会横須賀一家は関東屈指の実力組織であり、井の上はその中核を担った。2013年、東京都内での転落死により生涯を閉じたが、任侠と仏道を両立させようとしたその生き様は、今なお異彩を放っている。
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