製造業にとって、産業廃棄物の処理・減量化は急務となっています。 最終処分場の逼迫による処理費用の高騰に加え、小型焼却炉による自家焼却もダイオキシン禍により難しくなりました。 産業廃棄物の処理費用は経営を圧迫する一要素になりつつあります。 このような状況に直面して、自社の産業廃棄物を活用した商品化ができないかと考えたのが北星鉛筆です。 大量に排出される「おがくず」を微粉末化することで新素材化し、粘土をはじめとした新たな商品の開発を進めるなかで、同社は環境商品・素材のベンチャー企業に変身を遂げようとしています。 北星鉛筆は、下町情緒を残す東京都葛飾区四つ木に工場を構える中堅鉛筆メーカーです。 従業員には地元の住民が多く、典型的な地場密着型の企業です。 1日に約10万本の鉛筆を製造し、全国各地の代理店や問屋を通じて販売しています。 年商は約5億円で、97年には葛飾区優良工場にも認定されました。 「しかし、鉛筆業界を取り巻く状況は近年、非常に厳しく、先細りの状態にあります」と同社社長・杉谷和俊さんは述べています。 パソコンやEメールの普及、少子化の影響により、鉛筆に限らず、筆記用具の国内生産量は軒並み落ち込んでいます。 なかでも鉛筆の国内生産量は、2001年の経済産業省雑貨統計によると、これまで最も少なかった99年をさらに下回る263万6000グロス(1グロス=144本)で、前年に比べ14.6%の減少となっています。 ピークの66年に比べると約4分の1まで減っています。 さらに、製造工程で発生するおがくずの処理も課題となっています。 鉛筆は、板に溝を彫り、そこに芯をのせて板をはさみこんだ後、鉛筆の形に削るため、板の約40%がおがくずとなります。 同社でも2~3日で1トンのおがくずが発生します。 「かつておがくずは、銭湯の燃料として引っ張りだこだったが、銭湯の衰退により再利用の道が閉ざされた。 そのうえダイオキシン禍などにより、周辺住民からは煙を出さないでほしいという声も高まり、自家焼却も難しくなっていました」(杉谷社長) こうした状況のなか、廃棄物を活用した新事業開発という一石二鳥のアイデアで3年前から取り組んだのがおがくずのリサイクルです。 商品化の可能性を広げるために取り組んだのが微粉末化です。 微粉末化することで、ほかのさまざまなものとの混合が可能になり、それにより自社の営業ルートに乗りやすい製品を商品化しようという目論見です。 微粉末化技術の開発にあたっては、日清製粉のグループ会社である日清エンジニアリングに協力を仰ぎ、トナー粒子製造の既存技術などを応用することにより、おがくずを約100メッシュに微粉末化することに成功しました。 この微粉末を使った商品の第一弾として開発したのが「もくねんさん」です。 微粉末と水、のり(PVA:ポリビニルアルコール)を適度に混ぜ合わせた粘土で、一般の粘土と同様に自由な形に工作できます。 2~3日陰干しで乾燥させると木のように固まり、木と同様に切る、削る、色を塗る、穴あけ、ピス止め、接着加工も自由自在です。 例えばうすく板状にのばした「もくねんさん」を、鉛筆の芯にくるくると巻きつけることで鉛筆もでき、手にべとつかず、ほのかに木の香りもするのが特長です。 廃棄の際には可燃ごみとして処分でき、土に埋めれば生分解する点で、リサイクルだけでない環境商品としての特性もあわせ持ちます。 2002年はじめに500グラム換算で1日当たり1000個の製造設備を工場内に設置しました。 価格は500グラム入が500円、300グラム入が300円です。 4月から同社の既存ルートを活かし、学校や教材会社、文房具店などで本格的に販売を開始しました。 これまでにすでに7万個以上を販売し、順調な滑り出しをみせています。 いずれは定番商品になる可能性も秘めています。 また第2弾として、今年度中に「カラー水ねんど」の販売も予定しています。 これはおがくず微粉末と食品添加物指定の接着剤、顔料を混ぜ合わせた絵の具です。 水彩絵の具と同様の使い勝手ながら、油絵のような風合いが楽しめます。 現在、美術大学など専門家にも協力を要請し、色の調整や容量などマーケティングプランニングを練っています。 商品化の幅を広げるための微粉末化は思った以上の効果をあげています。 粘土や絵の具のほか、開発を進めているものとして消臭剤、生分解性フレーク状樹脂があります。 同社の廃棄物、営業ルートの活用といった現業の延長線上での環境ビジネスの発想と、商品化を重視した微粉末化などが成功のカギといえるでしょう。
No comments:
Post a Comment