Sunday, April 12, 2026

土壌微生物による独自の排水処理技術、土壌浄化法の設置を専門とするコンサルティングを手がける毛管浄化システム株式会社は、小規模な下水道処理施設、農業集落排水施設で実績を伸ばしています。

土壌微生物による独自の排水処理技術、土壌浄化法の設置を専門とするコンサルティングを手がける毛管浄化システム株式会社は、小規模な下水道処理施設、農業集落排水施設で実績を伸ばしています。 公共事業に民間技術が導入された、希有な例としても注目されます。 また、生態系に即した技術として、今後はアジアでの展開も期待されています。 ●下水道料金でまかなえる施設 2005年度末の日本の下水道普及率は69.3%(1冴く道利用人口/総人口)ですが、人口5万人未満の市町村では39.3%に留まっています。 そもそも都市向けに設計された下水道を、全国一律で普及させることに無理があります。 それでなくても、地方自治体は厳しい予算縮減を迫られています。 こうした下水道を巡る状況に一石を投じたのが、毛管浄化システムが開発した土壌浄化法です。 「下水道の建設費用は住民一人当たり150万円以上かかるといわれています。 1万人で150億円。 1万人規模の市町村に負担できる金額ではありません。 では各戸に小型浄化槽をつければいいのか。 1世帯4人とすれば1万人で2500基、1基の電気使用料は月1000-1500円かかりますし、そのほかの維持管理費を合計すると、各家庭の負担は下水道料金の倍以上になります。 これが、本当に現実的な解決策なのでしょうか」と、同社代表取締役の木村弘子さんは問いかけています。 土壌浄化法を採用した福島県会津坂下町の坂下西浄化センターは、計画水量1400m3で、1993年度に供用を開始しました。 接続率と処理量の増加によって、99年度には400m3/日の流入量を超え、維持管理費を賄った上で黒字に転じ、起債償還もできるようになっています。 下水道料金は140円/m3です。 また、2001年度に一部供用開始した鹿児島県知覧町の中央浄化センターの場合(4000人、2400m3)、下水道料金90円/面で、はやくも翌年には黒字になっています。 ●最大の特徴 土壌被覆土壌浄化法は、土壌微生物の働きで汚濁物質を分解する独自の水処理技術です。 下水道として採用される場合は土壌被覆型礫間接触酸化法という名称で、農業集落排水処理施設の場合はニイミシステム(国土交通大臣認定)の名称になっています。 それぞれ管轄官庁、関連法が異なるためです。 いずれの場合も、基本的に沈殿分離、接触ばっ気、沈殿接触濾過、消毒、放流という流れになっています。 第1の特徴は処理施設を土壌で覆うことです。 これによって悪臭を軽減し、処理槽からの飛沫や病原菌の飛散も防止できます。 被覆された汚水処理場は、芝などの植物で覆われた緑地になります。 また雨が降れば、被覆土壌から微生物などが処理槽に落ち、槽内をよい環境に保つ役目を果たします。 2番目の特徴は、好気性微生物を固着させたろ材による接触ばっ気槽にあります。 沈殿分離槽で汚泥を1日貯留の後、接触ばっ気槽で1日かけて浄化します。 活性汚泥法のように浮遊生物を利用するばっ気槽の場合、槽内を均一にするために、専門技術者による調整が必要になります。 また、ばっ気槽は、いわばただの箱で滞留時間が短いです。 これに対し、土壌浄化法では槽内を区切って長水路にしたことで、槽内を押し流される過程で複数のタイプの微生物によって有機物が分解され、浄化能力が高く、安定した処理水を得られます。 また、槽内の調整はほとんど必要なく、メンテナンスは年に数度汚泥を抜くだけでよいです。 第3の特徴は、機械装置が少ない省エネシステムであることです。 土壌浄化法施設の建設費が低く抑えられるのは、土壌被覆によって処理場の上屋、脱臭・消泡等の装置が不要になるのが大きな要因です。 ●自治体が自ら決断して導入 2006年4月現在、全国の68施設で採用されています。 しかし、1980年の会社設立当初は「まさか下水道になるとは考えていませんでした。 公共事業の下水道に民間の技術は採用されない、といわれていましたから」と木村さんは振り返ります。 最初は、微生物を含む土壌などの間に排水を流すニイミトレンチによって、公共施設などの浄化槽や雑排水処理を手がけていました。 ニイミトレンチは建物の周囲にトレンチ(溝)を設け、土壌生態系が持つ浄化能力を活用して、動力を使わずに排水を処理するシンプルな構造のものでした。 83年には、土壌被覆型の浄化槽としてニイミシステムを確立し、500人規模までの一般認定を取得しました。 「さらに大きな規模で認定を取得するためには、微生物の種類、浄化能力などのデータを求められ、多くの調査資金と時間を要しました」(木村さん)。 現在、ニイミシステムは4000人規模まで認定を取得しています。 大きな転換点となったのは、北海道占冠村に下水道施設として土壌浄化法を採用した中央浄化センターが、1990年に誕生したことでした。 建設省(当時)は前例がないことを理由に、土壌浄化法に補助金を出さないとしました。 これに対して占冠村は管渠にだけ補助を求め、結果的にモデル施設として補助が認められることとなりました。 通常の下水処理方式では5億円を要する1000人、460m3の処理施設が、土壌浄化法では1億3000万円で建設できました。 続いて3ヵ所がモデル施設になったことで、91年、建設省は自治体の強い要望があれば土壌浄化法を下水道事業として補助対象にするという方針を出しました。 95年度に供用開始された長野県小川村の高府浄化センターは、日本下水道事業団が初めて土壌浄化法を採択した例となり、下水道技術としての位置を確立しました。 「本来、補助事業は国民の生活をよくするためにあるはずです。 自治体や住民に過剰な、あるいは不必要な負担を強いるのでは、何のための補助事業なのかわかりません」と木村さんは指摘します。 さらに「土壌浄化法は低コストであるだけでなく、住民の方々に喜んでもらえる施設になります」と述べています。 年に1度「下水道祭」を開催する自治体も少なくありません。 下水処理槽を覆う芝生の上で、住民がお弁当を広げている光景が見られるのです。 2000年4月には、土壌浄化法施設を有する市町村によって、全国市町村土壌浄化法連絡協議会が設立されました。 維持管理などに関する情報交換を目的とすると同時に、国の指導の下に進められてきた下水道事業を、自治体が自らの手で進めようという意志を示したものでもあります。 一方、公共事業予算の削減に伴い、国土交通省は従来の全国一律基準を見直す方向にあります。 ■この流れの中で、木村さんは「スリム下水道事業」を提案しています。 これまでの実績によって「短期間、低コストで整備でき、下水道料金で建設費を償還できるのが土壌浄化法」と自信を深めてきた木村さんは、「地域の環境問題を解決する技術として、住民、事業主体に採択してもらえるのが一番」と述べています。 今後は「維持管理費が膨大にかかる既存の処理場についても、土壌浄化法への転換を提案していきたい」と考えています。 また、アジアでの展開する動きも始まっています。 すでに韓国で土壌浄化法が100ヵ所以上で採用されているほか、中国でも注目されています。 処理区内の河川環境改善にも効果が高い土壌浄化法は、水環境の悪化が顕在化しているアジアの国々で必要とされるに違いありません。

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