Friday, September 19, 2025

錆びゆく家電たちの沈黙 ― 循環型社会の影と倫理(2004年2月)

錆びゆく家電たちの沈黙 ― 循環型社会の影と倫理(2004年2月)
2004年、日本は循環型社会の実現を掲げつつも、その理念と現実の乖離に直面していた。2001年に施行された家電リサイクル法は、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンの4品目について、排出者が処分費用を負担し、メーカーが再資源化を行う制度を定めた。しかし制度は十分に浸透せず、廃棄された家電は山間や河川敷に野ざらしで積み上げられる光景となった。環境省の2003年全国調査では、テレビ42065台、エアコン9295台が不法投棄されており、その背景には処分費用の負担回避や回収ルートの不明瞭さ、制度の煩雑さがあった。さらに一部業者による不正処理も加わり、制度の網の目からこぼれる家電は増えていった。

環境省は監視や啓発、制度の補強に乗り出したものの、根本的に問われていたのは「手放し方の倫理」であった。物の終わりをどう扱うのかという問いは、冷たく沈黙する廃棄家電の姿に刻まれている。当時の循環型社会の理念はまだ言葉先行であり、数字の冷たさと新聞報道が描いた不法投棄の現場の風景は、社会の無関心と制度の未成熟さを浮き彫りにしていた。廃棄された家電の沈黙は、暮らしの裏側に潜む影を映す象徴的な風景であった。

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