2019年4月29日月曜日

緑の資源と赤い資源② 1998.10.15

「緑の資源のサービス価値を正当に評価する」

ではここで 「緑の資源」 のサービスに、 どれくらいの価値があるのかを考えてみよう。 その価値を算出するためになされた研究がいくつかある。それは 「生態系」システムを 「健全な状態で維持した場合」と、 「生態系」 システムを 「劣 化させた場合」とでは、 人問が得ることができる経済的・社会的・生態学的な便益の揖得にどれくらい違いがあるかを測定したものでぁる。 なかでもよく調査されているのがナイジェリア北部にある氾濫原の例だ。 まず、 農業開発という側面のみで農業にもたらす便益を比較する と、確かに1へク夕ール当たり自然状態が113ドル程度だったのが、 灌漑することで1299ドルと増大し、 灌漑のメリットがあるように見える。しかし、 洪水や乾燥状態に適した伝統的な農業、漁業、乾期の放牧、 そして薪、 屋根葺材料、 野生動物、肥科などの多様かつ有益な産物の採集といった多く の仕事を、 自然に機能 する湿地帯は、 その機能で果たしている。このような自然の機能を果たす経済 的便益を換算して比較した場合、 1ヘクタール当たりでは、 灌漑した場合は29ドル(プロジェクト費用を差し引いて) に対し、 自然状態を残した場合は約167ドルの価値を持つという結果が出ている。同じように水の経済的便益は1000立方メ一トル当たり、灌漑した場合は4セントに対 し、自然状態を残した場合は約48ドルの価値をもたらすいう試算である (ワ一ルドウォッチ研究所) 。

ただ、 だからといって農業開発を全面的に否定できるほど、 我々の社会は単純 ではない。一見、ある一つの商品の生産を最大化させることが我々にとって最も有益なことと思いがちだ。 しかし健全に機能している生態系がもたらす便益は、生態系の劣化や転換と引き換えにもたらされる便益を常にといっていいほど上回るということが、「緑の資源」 が持つ事実なのである。

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