2019年6月14日金曜日

廃プラの地球規模での海洋汚染深刻化

プラスチックごみ(廃プラの海洋汚染が世界規模で深刻化

プラスチックのごみ(廃プラ)が海洋汚染が拡大。生態系破綻に繋がる地球環境問題として浮上。その対策として日本政府・環境省が動き出した。全国のコンビニやスーパー等小売店で使われているプラスチック製レジ袋の無料提供を禁じる法制化に乗り出した。EU(欧州連合)は2030年までに使い捨てプラスチック製品の「使用禁止」を打ち出している。各国で排出されるプラスチックのごみが毎年約800万㌧が海を浸食中で、波力や紫外線によって分解された微細な粒子(5㍉以下のものをマイクロプラスチック)による生物や生態系への悪影響が深刻化しているが、現状追ってみた。

●海の生態系への悪影響
廃プラ(プラスチックごみ)の海洋汚染は今に始まったことではない。1970年代には海鳥に釣り用の糸が絡んで飛べなくなったり、海亀がプラスチック片を餌と間違えて飲み込んで死んだ事例が多く報告されている。90年代後半には海流によってプラスチックごみが集積してできた「太平洋ごみベルト」が問題視された。その面積は日本の国土の役4倍だと言われている。そして2018年6月にカナダで開催されたG7首脳会談では海洋に漂うプラごみを減らす数値目標を盛り込んだ「海洋プラスチック憲章」が採択された。ちなみに日本政府は米国政府と共にこの憲章の署名を見送っている。世界経済フォーラムの調査結果では、海洋へ流出するプラごみは年に約800万㌧。海に漂う1億5000万㌧余りだと言う。この状態を放置しておくと「50までに魚介類をの総量を超える」と警告している。更に水深6000㍍よりも深いところで発見されたごみの90%は使い捨てのレジ袋やペットボトルだったと言う。深刻なのはこうした廃プラのマイクロプラスチックが有害な化学物質と吸着。プランクトンや魚介が食べて有害物質は体内に蓄積・凝縮される。食物連鎖で人間を含む生物に悪影響を及ぼすのは必死だと思われる。目に見えない悪影響には無頓着なのがこの国の習い性だ。かっての水俣病の世界的な再来だ。

●増え続けるプラごみ
国連環境計画によると世界で消費されるレジ袋が年に5000億枚。飲料容器としてのペットボトルについては1分間に100万本消費される。先進国ではプラスチックのストロー等の使用中止やリサイクルの向上を目指しているも、それらの使い捨て製品はわずか9%に過ぎないのだ。日本は世界第3位の廃プラスチック輸出大国であり、2017年は143万トンの廃プラスチックを輸出した。日本のこれまで廃プラの主な輸出先は中国であり、年間輸出
量の半分を輸出していた。中国が2017年末から主に生活由来の廃プラスチックの輸入を禁止すると、日本の廃プラは東南アジアや台湾へ輸出されるようになったが、これらの国・地域も次々に輸入規制を導入した。このため、日本国内で処理される廃プラスチック量が増加している。廃プラを取り巻く環境が変化する中、新たな輸出先を探す対処療法的でなく、プラスチックに対する抜本的に発想を改める必要があるだろう。

●先駆的な都道府県の取り組み
レジ袋については2006年「容器包装リサイクル法」改正時に専門家らから有料化を求める声も出るも法制化は見送られた。その後、都道府県で何県かは独自で有料化をスタートさせた。例えば富山県。同県は08年以降、県内のスーパーやクリーニング店と協定を結びレジ袋の無料提供を廃止した結果、10年間でレジ袋約14億4700万枚を削減。山梨県も08年からスーパーのレジ袋の有料化を始め、これまで約8億5500万枚減らしたと言う。
現在レジ袋を有料化を実施する都道府県は20を超えている。

●エコマテリアル(環境配慮型素材)等の新産業の創出チャンス
一部のプラごみ対策として従来の石油系プラスチックから、天然・植物由来の紙や生分解性プラスチック(グリーンプラスチック)の使用促進の動きが本格化しそうだ。素材開発では世界のトップランナーを走る日本の素材開発メーカーには大きな商機を迎えている。環境に配慮したグリーンプラスチックの技術はすでにスタンバイ状態にある。市場に見合うコスト縮小も時間の問題モンダイなのだ。実現すれば名実ともに世界の「環境技術立国」だ。

●我が国の周回遅れの地球環境対策
食品ロスや海洋プラスチック問題など、地球規模の環境配慮に関する動きを見ていると、世界的に日本が進んでいるとは言い難い。2018年5月に開催されたSDGsのセミナーでも「日本は周回遅れ」と評されていた。国連環境計画(UNEP)によれば、日本人1人が排出する使い捨てプラスチックごみ量が、世界で2番目に多いのだ(1位は米国)。国際的なルールを反故にして海洋への放射能垂れ流し。廃プラは目に見えるが放射能や温室効果ガスは目に見えない世界だ。この目に見えない世界にこそ目を向ける時期にきているのでは。このところ我が国の環境政策は「新しい判断」とやらで大幅に後退しているように思えるのだ。人間の果てしない欲望の延長上に競い合うGDP(国民総生産)による尺度は限界値にある。相当以前に熱帯林を伐採し、木材を輸出してGDPを拡大した国々があった。しかし一方で緑・森林資源を減少した国は国力が長らく停滞している。今こそ、従来のGDP至上主義からの脱皮が求められている。今こそ「環境技術立国」に相応しいグリーンGDPの発想を構築する必要な時代にきている。安藤眞

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