燃える土が呼吸を始める バイオマスと農地がエネルギーに変わるとき(2000年代後半)
2000年代後半、日本の農政は静かな転換期に入っていました。表向きは食料自給率40%という数字が語られますが、水面下ではそれ以上に深刻だったのが、エネルギーと飼料まで輸入に依存した農業という構造でした。2007〜2008年の世界的な穀物価格高騰と原油高騰は、その弱点を一気にあぶり出します。特にトウモロコシや小麦、大豆の国際価格が跳ね上がり、配合飼料や肥料の価格も連動して急騰したことで、畜産農家や酪農家の経営は大きく揺さぶられました。
同じころ、日本国内では耕作放棄地が年々増え続けていました。農業としては採算が取りにくく、そのまま荒らしておくには惜しい土地が各地で草に埋もれつつあった。そこで浮かび上がったのが、食料だけではなく、エネルギーや飼料も含めて、農地を多用途に活かす発想です。
この文脈で語られるバイオマス自給を促す農地活用政策は、大まかに三つの狙いを持ちます。第一に、エネルギー作物や飼料作物を国内で増やし、化石燃料や輸入穀物への依存度を下げること。第二に、作物を通じて農家の収入源を増やし、経営基盤を作ること。第三に、バイオマスの生産や利用を地域内で循環させ、地域経済の循環モデルを構築することです。
海外では食料か燃料かという議論も起きましたが、日本では休耕地などを活用し、食料との競合を避ける方向が取られました。バイオマス自給政策は、農地と農村が21世紀を生き延びるための一つの賭けであり、農地は物質とエネルギーの循環を結び直す結節点として再定義されつつあったのです。
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