Friday, December 19, 2025

燃える土が呼吸を始めるバイオマスと農地がエネルギーに変わるとき(2008年12月)

燃える土が呼吸を始めるバイオマスと農地がエネルギーに変わるとき(2008年12月)
農地を食料生産だけでなくバイオマス資源として活用し、国内エネルギーの自給率向上を目指す政策が2000年代後半に注目された。背景には、長年の減反政策や農地の細分化、担い手不足により耕作放棄地が増加し、国内農業の生産基盤が弱体化していた現実がある。同時に、世界的な穀物需給の不安定化や価格変動リスクが高まり、輸入依存体質のままでは食料とエネルギー双方の安全保障が揺らぐとの認識が社会に広がっていた。こうした状況下で、未利用農地をエネルギー作物の生産に転換し、バイオエタノールやバイオガスとして地域内で循環させる構想は、農家の収入多角化と地域経済の再構築を両立させる策として期待された。政策の柱は三つあり、農地集積による効率化、地域分散型エネルギーの創出、農業と環境技術�
�統合である。とくにバイオマスは、化石燃料由来のCO2増加抑制と資源再生利用を支える概念として注目が高く、国のバイオマス活用戦略や研究開発支援と歩調を合わせつつ普及が試みられた。しかし、作物選定、精製コスト、流通体制、環境保全とのバランスなど課題も多く、すべてが順調に進んだわけではない。それでも、農地を「再生可能エネルギーの生産地」として捉え直す視点は、社会に新しい問いを投げかけた。それは、環境技術の進歩と農業政策の転換が、地方再生と国の基盤強化のためにどこまで機能しうるかという問いであり、今もなお続くテーマである。

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