流行歌の裏側で語られた抵抗 五木寛之 一九六〇年代という時代の自己弁明 一九六〇年代
五木寛之は、自らの作品を純文学ではなく、時代への個人的抵抗をエンターテインメントとして表現したものだと説明する。一九六〇年代、高度経済成長の進行とともに文学は社会の中心的言語である地位を失い、通俗文化が現実を語る役割を担い始めた。五木はその変化を直視し、流行歌やジャズ、通俗小説といった周縁的形式を選ぶことで、戦争の記憶や差別、国家と個人の緊張を描こうとした。しかし作品の内部には、作者の意図を超えて重い歴史的主題が沈殿し、単なる娯楽では回収できない厚みが生まれている。作者の自己弁明と作品の現実とのずれを通じて、文学が中心性を失った時代においても、書かれた言葉が時代と不可避に結びついてしまう姿が、静かな対話のかたちで浮かび上がってくる。
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