2024年7月17日水曜日

201 未利用バイオマスのアルコール燃料化の可能性 93-2002-04

 未利用バイオマスのアルコール燃料化の可能性


政府の新エネルギー産業会議の報告書によると、1999年度のバイオマスエネルギーの導入実績は566万6000キロリットルであり、2010年度には2879万2000キロリットルに達すると見込まれています。これにより、2010年度の新エネルギー導入目標を大幅に上回ることが可能です。2002年度からはバイオマスが新エネルギーとして明確に位置づけられ、補助対象となっています。これにより、食品廃棄物や汚泥、し尿・ふん尿などを利用したメタン発酵による発電や熱利用が一部で始まっています。


しかし、建設廃木材、間伐材、製材所の端材、おがくずなどの林業系バイオマスや、モミ殻、稲ワラ、バガスなどの農業系バイオマスについては、これまで有効な利用方法がなく廃棄物として処理されてきました。こうした未利用バイオマスの利用について、日本は欧州などに比べて遅れをとっていましたが、2001年度の地球環境保全関係予算において、経済産業省や農林水産省が初めて研究開発予算を計上しました。


アルコール燃料の中でも、エタノールは特に注目されています。エタノールはバイオマス資源を活用したエネルギーであり、酵母を使って糖質を発酵させることで生産されます。エタノールの性状はガソリンに近く、既存のガソリンエンジン技術がそのまま活用できます。エタノールは粒子状物質(PM)やNOx、CO2の排出を大幅に抑制することができるため、低公害性・温暖化防止効果が高く評価されています。


現在、ブラジルやアメリカ、カナダではエタノールを10%混入したガソリン(ガソホール)が普及しており、EU各国やインド、タイでも使用が検討されています。日本でも、かつてはガソリンに20%程度のエタノールを混入して販売していた時期がありましたが、石油価格の下落や天然ガス車、ハイブリッド車の開発により、燃料としての利用は減少しました。


日本でアルコール燃料の普及が進まなかった主な理由は、既存のガソリンや軽油との価格競争力の低さです。エタノールの価格は原料コストに大きく左右され、米国ではガソリンの2倍の価格になります。食料自給率の低い日本では、原料供給ソースの確保が難しく、価格競争力を高めるためには国産の未利用資源を活用する必要があります。


未利用バイオマスをアルコール燃料として利用する技術には、以下のようなプロジェクトがあります。


月島機械・丸紅グループ

フロリダ大学のイングラム教授が開発した特殊菌「KO11」を使用し、セルロースとヘミセルロースの両方を糖化・発酵できるシステムを開発。1トン/時規模のパイロットプラントでは400リットルのエタノールを生産。


日揮・日商岩井グループ

鹿児島県出水工場に反応器容量600リットルの実証プラントを建設。濃度70%の濃硫酸を用い、セルロースやヘミセルロースを糖化。廃材から1トン当たり280キロのエタノールを抽出することを目標。


日本食糧

東京・江東区に古紙・木材からエタノールを製造するパイロットプラントを建設。従来の酵素と酵母による発酵技術に加え、オゾン酸化法を導入し、糖化効率を大幅に向上。

これらの技術開発が進めば、日本におけるアルコール燃料の普及と価格競争力の向上が期待されます。


このように、未利用バイオマスのアルコール燃料化は、環境保全とエネルギー資源の有効活用に向けて大きな可能性を秘めています。







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