2024年7月11日木曜日

非木材紙 2001 10 87

 非木材紙の普及状況と課題

近年、紙の原料には木材パルプが主に使用されているが、森林資源の保護や環境対応の観点から非木材紙が注目されるようになってきた。非木材紙とは、ケナフやバガス(サトウキビの搾りカス)、アシ、タケなどを原料とする紙のことを指す。特にケナフは他の農作物が育たない土壌でも栽培可能で、4~6ヶ月で3~5メートルに成長し、木材の3~5倍の収穫量が見込める。そのため、環境への負荷が少なく、CO2吸収量も樹木の約5倍と高いため、地球温暖化抑制の観点からも注目されている 。


日本では、ケナフパルプの利用が1991年にオージー社がタイのフェニックス社から輸入したのが始まりで、その後バガスやタケパルプの輸入も進んだ。非木材紙普及協会が1993年に設立され、非木材紙認定基準が策定された。この基準では、非木材パルプを重量比10%以上使用している紙・紙製品・加工品に対し認定マークが発行される。これにより、パンフレットやカレンダー、名刺、便箋、封筒、OA用紙、葉書など多岐にわたる用途で非木材紙が採用されるようになった。


さらに、1998年には東リがケナフ製の壁紙を発売し、建材から発生する揮発性有機化合物(VOC)によるシックハウス問題が広く認知されるようになった時期とも重なり、新築の戸建住宅や分譲マンションでの採用が広がった。現在、壁紙の9割以上を占める塩化ビニル製壁紙に比べ、非木材紙の壁紙は環境に優しい選択肢として注目されている。


また、非木材パルプの課題としては、安定供給性の確保と輸送コストの低減が挙げられる。ケナフの収穫が年1回に限られるため、原料として供給するまでの保管場所が必要となり、輸送コストもかさむ。これに対して、年2回の収穫が見込める高温多雨地域での栽培や、栽培地近くにパルププラントを建設することで解決が図られている。非木材紙普及協会は経済産業省からの委託事業として、非木材繊維の最適なパルプ化法を研究し、木材パルプに近い価格でケナフパルプを製造する技術を確立している 。


非木材紙は、森林資源の保護や環境対応の観点から重要な役割を果たしている。日本国内でも、その利用が拡大しており、今後さらに普及が進むことが期待されている。一方で、安定供給やコストの課題もあり、これらの課題を解決するための技術開発やインフラ整備が進められている。

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