2024年7月8日月曜日

食品廃棄物のリサイクル処理法 2001 02 79

 


「第147回国会」において「食品循環資源の再利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)」が成立し、2001年4月の施行に向けて現在、準備が進められている。


処理量削減目標20%が課せられた食品関連事業者では、異物の除去や分別、食材調達の見直しや調理の工夫といった発生抑制とともに、生ごみ処理機の設置や再生業者への外部委託などの対応を進めている。2割削減であれば必ずしもリサイクルだけでなく、脱水・破砕といった手法でも実現可能だ。そのためコスト面を考慮し、こうした現実的な方法を選択する事業者も少なからずあると思われるが、食品廃棄物の再資源化に向けた事業機会が創出されたことだけは確かだ。


また、食品廃棄物の中でもリサイクル率の極めて低い事業系の一般廃棄物については、これまで技術開発もあまり進んでおらず、リサイクル施設もほとんどないのが現状。法施行に向けて、スーパーやコンビニ、外食産業から排出される事業系一般廃棄物のリサイクル施設、事業の整備も急務だ。


こうした状況の中、すでに各所で食品廃棄物の循環システムの構築が始まっており、それに合わせ、再生事業の立ち上げ、技術開発、市場投入も活発化している。今のところ、想定されている再資源化の手法は堆肥化、飼料化、バイオガス化など。しかしながら現在、装置にしろ、再生事業にしろ、関連事業が堆肥化へと集中している傾向にある。年間2000万トン程度発生する食品廃棄物を再資源化するためには、堆肥化だけでは当然、供給過剰となるのは確実だし、施肥のタイミングもあり年間を通して需要のばらつきもある。事業としてみても競争激化が予想される。


そこで、今後の事業展開、あるいは資源循環の側面から大きな期待を寄せられているのが飼料化だ。食品廃棄物の有効利用は当然のことながら、以前より政府が推し進めているものの、なかなか進展しない自給率の向上という狙いとも一致、有望視される。


「養豚配合飼料での利用」

以前まで残飯は飼料として当たり前に利用されてきた。特に養豚、いわゆる残飯養豚といわれるものだ。農産加工物や賞味期限切れ食品など都市厨芥を、畜産農家などが濃縮飼料原料として集め、各自で配合して豚に与えていた。しかし60年代頃から飼料メーカーや農協などが海外から輸入したトウモロコシや大豆粕を使った配合飼料を販売するようになった。また、畜産物の消費拡大に伴う大規模な養豚経営展開、養豚経営の都市圏からの後退で、さらに養豚経営での都市厨芥利用が減少した。就業者の高齢化などにより、省力化を図るため配合飼料への切替を進めたのも大きな要因だ。


農水省の畜産生産調査によると、肥育豚1頭当たりの残飯給餌量は、1965年に205.9kg/年だったものが80年には82.6kg/年、97年には6.2kg/年と減少している。また現在、国内には約1万2500戸の養豚農家があり、飼養頭数は約990万頭だが、残飯給餌による養豚農家は約1000戸、飼養頭数は約20万頭となっている。


しかしながらその一方で、多量かつ鮮度・品質が安定、処理しやすい食品製造副産物、たとえば魚腸骨やなたねかす、焼酎かす、果汁絞りかすなどは加工され、配合飼料原料としての利用が進んでおり、96年時点で104万トンが飼料化されている。


現実的には、今のところ輸入飼料原料のほうが価格が安く、品質も安定している。しかし、現在の市場最安値ともいわれる飼料価格がこのまま続くとは考えにくい。世界的に農業技術の向上による食料増産はとっくに限界に来ており、1人当たりの穀物生産量は84年をピークに毎年1%以上減少している。中国でも生活向上で食肉消費が増加し、穀物輸入国となっている。さらに、世界的な異常気象の影響により、ますます農産物生産の不安定要素は高まっている。


また、日本の穀物自給率は28%と、人口1億人以上の国のほとんどが80%を超える中では極端に低い。にもかかわらず食品廃棄物量の多さは世界でもトップクラス。こうした状況下で、食品リサイクル法を機に、生産、流通も含めた食品業界が再資源化を模索する場合に、産業廃棄物はもとより、事業系一般廃棄物においても飼料化という方向性がクローズアップされてくる。


「廃棄物全量の半分は利用可能」

食品廃棄物をもとにした飼料原料はどれぐらいの量が利用可能なのだろうか。北海道立滝川畜産試験場が実施した都市厨芥飼料化製品の給与試験によると、「配合飼料に15~30%代替して給与しても飼料摂取量、枝肉重量、枝肉歩留まりなどの成績は配合飼料と比べて何ら遜色はない。ただし、代替率を上げることで、脂肪の明るさの低下、不飽和脂肪酸割合の増加、融点低下の傾向が見られた。肥育前・中期は配合飼料の20%代替が可能だが、肥育後期では飼料の粗脂肪含有比率を軟脂肪豚発生防止のための目安とされる5%以下となるよう、代替率を10%までとする」という試験結果を出している。つまり飼料中の高脂肪含有量を目安として、成育段階で違ってくるものの、10~20%の配合が可能なようだ。


現在、国内での養豚用配合飼料の年間生産量は約620万トン。その原料の主なものは、トウモロコシ(290万トン)、マイロ(約110万トン)、大豆粕(87万トン)となっている。一方、食品リサイクル法で対象となっている事業系の廃棄物は事業系一般廃棄物が600万トン、産業廃棄物が340万トン。これを全量乾燥加工したとすると大体5分の1、無理にしても、10%配合で62万トン、20%で140万トンの利用可能性がある。食品リサイクル法の削減目標20%分ならば十分まかなえる数字だろう。


「ドライかリキッドか」

食品廃棄物の飼料化では大きく分けて2つの方法がある。ひとつは乾熱や湯温脱水で乾燥処理を行うドライ方式、もうひとつは湿式処理を行うリキッド方式だ。


「乾燥させるドライ給与方式」。もうひとつが「リキッド給与方式」だ。


ドライ給与方式は乾燥させるコストがあるものの、輸送や保存が比較的容易というのが特徴。一方、リキッド方式は、醸造、乳製品加工、大豆加工、果物加工などの工場から高水分のまま養豚場に搬入し、養豚場で飼料調整を行い給与するというもので、乳業界からホエイが多く出る欧州などで行われている。乾燥させるコストはないが、夏季高温の日本では、バイプや飼料調整層の衛生管理に気を使う必要がある。食品廃棄物を原料にした飼料に限らず、今のところ国内ではドライの給餌システムを取り入れている養豚場が多く、輸送コストなども考慮に入れると、ドライ給与方式の方が融通性はありそうだ。


例えば、三造有機リサイクルは、札幌市リサイクル団地内に生ごみリサイクルプラントを建設し、97年1月より札幌市(市長:桂信雄氏)清掃部の指導のもと、札幌市環境事業公社から市内の学校、ホテル、レストラン、食品加工工場などから排出される残飯・厨芥などの事業系生ごみの供給を受け、リサイクル事業を行っている。


同プラントは「油温減圧脱水法」と呼ばれる方式で、天ぷらを揚げるのと同じ原理を利用して密閉減圧容器の中で脱水・乾燥させるもの。1日当たり10時間で35トンの事業系生ごみを処理し、飼・肥材料を7トン/日生産する。本プラントで作られる生ごみ再生品は、家畜飼料としての各種適性試験を行った後、99年2月に農林水産省・畜産局流通飼料課に申請書を提出し、飼料配合材としての暫定値を認定された。現在、飼料配合材を配合飼料メーカーを通じて飼料消費者への販売を展開しているほか、プラントの販売も強化している。


また環境装置メーカーのオカドラ(横浜市)は、生ごみを煮沸乾燥、飼料化する装置を開発している。乾燥工程の効率化で、従来方式に比べ建設費、運転費ともに半分以下で済むという。1日処理能力は2トン~400トンまで対応。建設費は1日処理量1トン当たり1000万~2000万円。生ごみ1トンを処理するランニングコストは4000~5000円としている。


さらに同社では今後、商社や飼料会社などと連携し、生ごみ飼料の流通網を整備する方針。独自開発した煮沸乾燥機で生ごみを乾燥し、5分の1~10分の1に減量、異物を除去した後に高温殺菌、脱脂機で油脂分を取り除き飼料化する。飼料化装置はスーパーやレストランなど大量の生ごみを排出する事業者に売り込む。一方、小口の顧客には煮沸乾燥機だけを販売し、できた乾燥品を引き取り一括して飼料化するリサイクル体制構築も含め、展開していきたい考えだ。


「協同組合化でシステムを構築」

とはいえ、飼料化を事業として捉えた場合、堆肥化と同様にさまざまな障害ももちろん多い。特に事業系の食品廃棄物を視野に入れると、飼料の品質を左右する異物や塩分などの分別、回収量の確保とロット管理、飼料安全法をクリアする品質管理などが挙げられる。また豚について食味は良好であるものの、格付け評価が低く出ることなどもある。中小規模の事業者も多い食品関連事業者や養豚事業者がそれぞれ単独でシステムを構築するのは難しい面がある。


そこで、協同組合化することによって、飼料化のシステムを構築しようという動きも出てきた。全国食品リサイクル事業協同組合(愛知県名古屋市)が5年前から進めてきた構想が2001年度にも実現しそうだ。


同組合が行う食品循環資源再生事業は、表1のように行われる。「ものの流れ」は排出企業から食品循環資源が出され、食品リサイクル工場で飼料化される。その後、飼料が養豚事業者、食品加工事業者を経て、最終的に肉の形で排出企業に戻ってくる仕組みだ。「金の流れ」については、排出企業から処理委託費を負担してもらって、それを元に食品リサイクル工場で飼料化。できた飼料を養豚事業者に支給し、生産された豚肉は契約栽培と同じ考え方で、最終的に排出企業に戻す。その際も食肉購入費を出してもらうが、従来のものより品質が良くて安い、安全な豚肉を提供する。


つまり、関係者全体でひとつの企業体を作るといった考え方で、皆で設立した会社内で需給バランスをとりつつ流通・営業その他の経費などの無駄を排した循環システムを作り上げる構想。参画した全員が、個々にやったのでは得られないメリットが得られる。99年に農水省の補助を得て、実証試験を行った結果、全体のシステムの機能や信頼性の評価、リサイクルの品質評価である程度の見通しを付けた。収支見通し(表3)も良好だ。PFI法人による実用プラント第1号バイロットモデルを2001年度、名古屋に設置する予定だ。

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