2024年7月10日水曜日

2001年の土壌浄化法の行方 2001 03 80

 「工場跡地や研究機関跡地の再開発による土壌環境汚染事例の顕在化」


工場跡地や研究機関跡地の再開発などにより、土壌環境汚染事例が顕在化してきている。環境庁の調査結果では、98年度末までに都道府県が把握した土壌汚染の調査事例659件(91年度からの累積)のうち、土壌環境基準に適合していないことが判明した事例は292件にのぼっており、このうち98年度に判明した事例だけで111件となっている。


しかしながら現在、国内における土壌環境保全対策の法制度は「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」「ダイオキシン類対策特別措置法(汚染された土壌に係わる措置)」「水質汚濁防止法(地下水浸透規制・浄化措置命令)」が整備されているのみ。「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」は農用地を対象にカドミウム、銅、ヒ素。「ダイオキシン類対策特別措置法」はすべての土地を対象にダイオキシン類の都道府県等による処理対策の実施と汚染原因者への費用負担を義務付けるもの。「水質汚濁防止法」は、すべての土地を対象にカドミウム等23物質について、都道府県知事による汚染原因者への処理対策の実施命令が行なえるというもの。


だがそれぞれでは、対象地、対象物質、浄化義務など制度としては弱い面がある。特に市街地については、一部の地方自治体で条例を定めているところもあるが、ダイオキシン類を除き浄化義務は無いに等しい。


そこでいよいよ、「土壌環境保全対策の制度の在り方に関する検討会」(担当:環境省環境管理局水環境部土壌環境課)が2000年末から、費用負担のあり方も含め市街地の土壌汚染対策制度について検討を開始している。主な検討課題は、1. 汚染地の把握と土壌汚染の調査のあり方、2. 土壌汚染の環境リスクの捉え方、3. 処理対策のあり方、4. 情報管理のあり方、の4項目。


については、市街地における土壌汚染の大半が民有地であることから、その把握や調査の実施に必要な仕組みについて検討を進める。2. は現行の環境基準とは別に、環境(健康)リスクを踏まえた新たな指針値(対策発動基準、浄化基準など)の設定などが検討される予定。3. は2. の検討に基づき、汚染物質や汚染実態に応じた対策技術の整理、あるいは対策制度のあり方を検討する。費用負担のあり方などが焦点となりそうだ。4. では、米の全国優先順位一覧(NPL)のような汚染地情報の登録制度が重要課題となる。

とりあえず、2002年の「市街地土壌汚染対策法」(仮称)国会提出を目標としている。とはいえ検討スケジュールや法制化の見通しに関しては、検討事項に難しいものが多いため今のところ白紙状態。法の内容については、米・スーパー ファンド法などをモデルに、PPP原則 (Polluter Pays Principle:汚染者支払原則)を前提として国内事情に適したものになると予想されるが、汚染者の範囲(遡及性)や公的資金を投入するのか、法施行以前の汚染に対する遡及性など具体的な内容はこれからの検討次第。


浄化義務を課すのであれば、法施行当初は現実的にみて処理対策のための公的財源が設けられるものと思われる。また、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(埋立処分終了後の最終処分場の適正管理)や「金属鉱業等鉱害対策特別措置法」など関連法の改正も視野に入ってくると予想される。


現在のところ検討会では、環境基準やリスクの捉え方に関する議論と、関係者からのヒアリングを行なっている段階。ヒアリングでの国への要望としては、対策費用の税制優遇を含む支援、調査・浄化技術の開発支援・指導、インセンティブのある情報公開制度の仕組みなどが挙がっている。


土壌汚染の調査については、不動産売買、証券化、サイトアセスメント規格の発行などで法制度に関わらず一般化していくものと思われるが、実際の浄化が行われるかは支援制度も含めた法制度の確立が重要なカギを握る。潜在市場13兆円ともいわれる浄化ビジネスが一気に花開くか、制度の在り方次第で大きく左右されそうだ。


夏頃をメドに検討会の中間報告がまとめられる予定。

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