2024年7月4日木曜日

年間40万トン発生 繊維強化プラスチック(FRP)のリサイクル技術 2000.08(73)

 

超臨界水によるケミカルリサイクル技術


廃製品の再資源化を進める場合、その処理コストをいかに再資源化物の価値でカバーできるかが鍵を握ります。より価値の高いものへと再資源化できればそれに越したことはありません。そういった意味で次世代型のFRP処理技術として大きな期待が寄せられているのが、加水分解を利用した超臨界水によるケミカルリサイクル技術です。


工業技術院の物質工学工業技術研究所は熊本県工業技術センターと共同で、アルコールとアルカリを添加した超臨界水を用いて、炭素繊維強化プラスチック中のフェノール樹脂を分解して炭素繊維を回収する技術を開発しました。フェノール樹脂は難分解性であり、380度Cの超臨界水単独では20%以下の低い分解率しか得られなかったが、同じ温度条件下でアルカリを添加すると65%まで分解率が増大しました。さらにエタノールを加えた超臨界水+エタノール混合系アルカリ溶液を用いることで分解率は93.9%まで増大し、まったくプラスチックが付着していない精製された炭素繊維が得られました。


不飽和ポリエステルを使用したFRPは、超臨界水により短時間で容易に分解できるが、フェノール樹脂を使用した炭素繊維強化プラスチックはFRPに比べてはるかに分解しにくく、今までに分解して炭素繊維を回収した例はありません。さらに炭素繊維はガラス繊維に比べて付加価値が高いので回収する価値が高いです。


運輸省船舶技術研究所と日立製作所の共同開発


運輸省船舶技術研究所と日立製作所、日立化成工業が共同開発した廃プラスチック発電とFRPリサイクルシステムを組み合わせたシステムでは、FRPを高温溶融し、冷却後リサイクル製品化、また有機分の樹脂は超臨界水で分解して原料に戻します。超臨界水は蒸気を供給するボイラーから得られ、電力は蒸気タービン、コンバインドサイクル発電で供給し、ボイラー、ガスタービンの燃料には廃プラスチック熱分解ガスを使用します。年間で廃FRP4000トン、廃プラスチック5万7600トンを処理でき、余剰電気量も6537万キロワット得られる試算です。経済的にも実用化を可能にしたシステムと期待されています。


FRP廃棄物の現状と課題


FRP(繊維強化プラスチック:Fiber Reinforced Plastics)は、生産量の半分を占める浴槽、浄化槽、水槽や建築資材のほか、プレジャーボートや漁船など各種小型船舶、飛行機や自動車、工業機械、釣竿、テニスラケットに至るまで幅広い分野で利用されています。強化プラスチック協会によれば、FRPの年間出荷量は1968年に4万4000トンだったものが、現在は約50万トンまで拡大し、1998年の廃棄量は約27万トンと推定されています。そのうち工場での製造過程からの発生量が1割ほどで、廃棄製品としては住宅器材(浴槽など)が約8万トン、工業機材、タンク・容器がそれぞれ約3万トン、船艇船舶、建設資材がそれぞれ約2万トン。2002年には廃棄量が年間40万トンを超すと推定されています。


しかし現在のところ、FRPは多量のガラス分を含み、破砕や燃焼が困難でコストが大きいこと、また船舶などは処理施設までの収集・運搬コストが大きいことが再資源化・処理のネックとなっています。現状では埋立て、高温焼却、粉砕などにより処理されており、不法投棄や放置船などの問題も前々から指摘されています。


リサイクル技術の開発と今後の展望


最近では工場からの破砕くずについては、粉砕してSMCフィラーに利用したり、コンクリート骨材として利用する方法が開発、実用化されています。一方、船舶などの廃棄品については異物の分離が難しいこともあり、油化、ガス化による処理の開発が進められています。しかしまだまだほんの一部の動きでしかなく、処理技術、回収・処理システムの整備が待望されています。


リフォームを機に処理が進んでいるのが浴槽です。自社製品の回収、再資源化を目指し急ピッチで技術・システムの開発が進められています。FRP浴槽はキルン炉で焼却してセメント原料にすることが一部で行なわれていますが、そのままではカロリーが低く、熱量調整のためにほかの廃プラスチックと混ぜて燃焼させる必要があるといった課題を抱えています。そこで、素材の持つ性質を生かしてそのままコンクリート骨材などに再利用する方法が主流となってきそうです。


積水化学工業では1999年8月から近畿地区のリフォーム住宅を対象に、廃円む浴槽の回収、リサイクル試験を開始しました。奈良工場に導入した試験設備で破砕、セメント骨材として再利用しており、2000年度末までに主に近畿圏を対象としてリサイクルシステムを構築する予定です。


クボタでは、FRP浴槽の大手メーカー数社と協力して近畿圏を中心に工場で発生する不良品などを回収し、リサイクル工場で破砕・粉砕、これを同社の関連会社に供給してセメント混和材、セメント製品骨材などに再利用しています。


同社は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助を受け、三重県伊賀町に建設した日量5トンの実証プラントで1995年12月からFRP浴槽のリサイクル技術の開発に取り組み、1997年にはFRP浴槽を破砕・粉砕し、これを骨材としてセメント瓦をつくる技術を確立しました。これまでの実証研究の成果をもとに、新たにNEDOの補助を受けて、廃FRP浴槽の大量処理技術を開発しています。

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