メタン発酵によるバイオガスプラント:2003年5月
#### ドイツ LIPP GmbH社のバイオガス技術
**概要**
LIPP GmbHは25年以上にわたり、自社の牧場でメタン発酵によるバイオガスプラントの研究・開発を進めてきました。バイオガスプラントは、家畜排泄物などの有機廃棄物をメタン発酵させることでバイオガスを生成し、そのガスをエネルギー源として利用する技術です。ドイツでは1970年代から畜産分野での環境負荷が問題視され、アンモニアの蒸散や地下水汚染などに対応するために様々な規制が設けられてきました。このような背景から、LIPP社のバイオガス技術は環境負荷を低減する重要な役割を果たしています。
**タンク製造技術**
LIPP社の独自技術であるスパイラルタンクシステムは、ロール状の金属シートをタンク建設現場で巻き上げるもので、溶接を必要とせず、短期間で耐久性の高いタンクを建設することができます。この技術は、ステンレス鋼板を亜鉛鋼板に接着した複合材料「VERINOX」を使用することで、コストを抑えつつ高い耐腐食性を実現しています。また、タンクの接合部には缶詰の蓋の部分の圧着方法を用いることで高い機密性を確保しています。この技術は、世界80カ国でライセンスされ、広く利用されています。
**バイオガスプラントの構成**
LIPP社のバイオガスプラントは、リアクター(発酵槽)とガスホルダーを組み合わせた「コンバイオリアクター」を採用しています。これにより、土地の有効利用とコスト削減が可能となり、ガスホルダー部には耐ガス性の材料を使用して安全性を確保しています。リアクターは35℃~40℃で約30日間滞留させ、嫌気性発酵を行い、発生したバイオガスはガスホルダーに貯蔵されます。さらに、消化液は固液分離装置で固体と液体に分離され、堆肥化設備や液槽に一時貯留されます。
**日本企業との提携**
2001年7月、LIPP社は日本のシルピオ(岐阜県・大垣市)と技術移転契約を締結しました。シルピオは産業廃棄物処理業を営む企業であり、LIPP社のバイオガス技術を日本国内で実用化するために協力しています。シルピオは、LIPP社の技術を活用して、日本国内でのバイオガスプラントの普及と運転ノウハウの蓄積に努めています。
**環境負荷の低減と持続可能な農業**
ドイツでは、畜産農家の大型化と集中化に伴う環境負荷が問題となり、EUによる飲料水保護のための規制や硝酸塩に関する指針が設けられました。LIPP社のバイオガス技術は、これらの規制に対応する形で、家畜排泄物の有効利用と環境負荷の低減を実現しています。バイオガスプラントの導入により、アンモニアの蒸散を抑え、温暖化ガスの生成を減少させることが可能です。また、消化液を堆肥として再利用することで、持続可能な農業を支援しています。
LIPP社のバイオガスプラントは、技術力と安全性が高く評価されており、今後も世界各地での導入が期待されています。
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