中国における砂漠化の進行と対策の歴史 - 2003年から2020年代
中国北部の砂漠化は1990年代後半から急速に進行し、特にゴビ砂漠の拡大が大きな問題として浮上しました。
1994年から1999年にかけて、ゴビ砂漠は約52400平方キロメートルも拡大し、首都北京市に240キロメートルの距離まで迫る事態となりました。
乾燥した気候に加え、過放牧や森林伐採、草地の過剰利用が影響して、内モンゴル自治区や甘粛省、寧夏回族自治区を中心に広範な砂漠化が進行し、
農地や草地が次々と荒廃していきました。2020年時点では、砂漠化面積は約2670000平方キロメートルに達し、中国全土の約27%を占めるまでに至っています。
砂漠化の要因のひとつとして、羊やヤギなどの家畜の過剰放牧が挙げられます。中国全土で家畜数は約260000000頭にのぼり、アメリカ国内の家畜数である約80000000頭を大きく上回ります。
特に内モンゴル自治区では、1ヘクタールあたり0.6頭が適正とされる草地に、約3頭もの家畜が放牧されており、植物が根ごと食べ尽くされるため土壌が露出し、風で飛ばされやすくなっているのです。
この結果、年間におよそ15000平方キロメートルの草地が砂漠化していると推定されています。
この深刻な状況に対処するため、中国政府は1978年から「三北防護林プロジェクト」(別名:グリーン・グレートウォール)を推進し、砂漠化を抑制するための大規模な植林計画を開始しました。
2050年までに総延長4500キロメートルの防風林帯を整備する計画であり、2020年代までに500億本以上の樹木が植えられ、25万平方キロメートル以上の砂漠地域での植林が進められました。
これにより、内モンゴル自治区や新疆ウイグル自治区、寧夏回族自治区を中心に緑地の回復が図られ、砂嵐の発生抑制に一定の成果を上げています。
さらに、2020年代には国際企業であるシーメンス社や中国国内のエネルギー企業である中国電力投資公司(CPI)も参画し、風力発電インフラの構築を通じて砂漠地帯における植生回復支援とエネルギー供給を進めています。
内モンゴル自治区のホルチン砂漠周辺では、シーメンス社が支援する大規模な風力発電所が設置され、年間に約1000000トンのCO₂削減効果が見込まれています。
一方、砂漠化によって発生する砂嵐は、PM2.5やPM10といった微小粒子物質を含んでおり、北京や天津、上海といった大都市圏で大気汚染を悪化させています。
北京市内では年間50日以上が大気汚染の危険日とされ、特に春先には黄砂が毎年数十万トンに及ぶ砂塵を飛来させ、日本や韓国にまで影響を及ぼしています。
黄砂は人々の健康や農作物に影響を及ぼすだけでなく、光化学スモッグや酸性雨の原因にもなるため、周辺諸国にとっても重大な環境リスクとなっています。
こうした影響に対処するため、中国政府は植林活動に加えて、二酸化炭素の削減や土壌保全技術の導入を強化しています。
たとえば、中国農業発展公司(CAG)と共同で行う「土壌改良プロジェクト」では、内モンゴル自治区において砂漠の緑地化を目指し、保水材や特殊肥料を土壌に混ぜることで植生の回復を図る試みが行われています。
このプロジェクトは、2025年までに1000000平方キロメートル以上の土地を緑化する目標を掲げ、砂漠化対策としての効果が期待されています。
中国の砂漠化問題は、国家規模のプロジェクトや多国籍企業の協力により一定の改善が見られるものの、根本的な解決には依然として多くの課題が残されています。
人口増加や農業需要の高まり、気候変動による影響が加速する中で、砂漠化の抑制と持続可能な環境保全は今後も重要な課題となるでしょう。
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