徳島県美馬郡-鶏ふん肥料化プロジェクトの歴史-1994年から2020年代まで
1994年4月:プロジェクトの始動
徳島県美馬郡は、養鶏業が盛んな地域であり、約300戸の農家が300万羽以上の鶏を飼育しています。この大規模な鶏ふんの排出(年間約14万トン)は長年にわたり地域の水質汚染や悪臭の原因となっていました。そこで1994年4月、美馬郡の養鶏関連団体や地元企業が協力し、鶏ふんを堆肥化して再利用するための第三セクターが設立されました。プロジェクトには、徳島県と国からの補助金も提供され、総事業費は約15億5千万円に達しました。これにより、美馬郡内に8カ所の堆肥センターが設置され、年間約14万トンの鶏ふんから約2万3千トンの堆肥が生産される体制が整いました。この堆肥は、地元の野菜農家や果樹農家に供給され、さらに肥料会社を通じて全国にも流通しました。
2000年代:需要と技術の拡大
2000年代に入り、堆肥の需要が急増し、特に有機農業の普及に伴って徳島県内外からの注文が増加しました。また、丸善油化商事(東京)は、鶏ふんに腐植酸を加えた微生物土壌改良剤「バイオターフ」の開発・販売を進め、全国のゴルフ場や公園での利用が広がりました。「バイオターフ」は、土壌の通気性や栄養供給力を高めると同時に、土壌中の病害リスクを低減することから高い評価を得ており、年間800トン規模で生産されました。
2020年代:持続可能な発展へ
2020年代に入ると、美馬郡内の堆肥センターは10カ所に拡大され、堆肥生産量も年間約2万3千トンからさらに増加しました。この堆肥は、全国の有機農業の推進に欠かせない資源として利用されています。また、「バイオターフ」も年間1200トン規模に生産が増強され、公共施設やスポーツ施設での需要がさらに高まっています。
環境面では、堆肥化プロセスの技術が進歩し、悪臭成分の除去装置や環境モニタリングが導入されました。これにより、水質や空気品質の改善が確認され、環境保護への貢献も強調されています。地域の水質モニタリングにより、鶏ふんの堆肥化が環境に与える影響が低減されていることが実証されました。
このように、1994年に始動した美馬郡の鶏ふん肥料化プロジェクトは、地域環境の保護と持続可能な農業を支える取り組みとして、2020年代においても成長を続けており、他の地域からも注目されるモデル事業となっています。
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