Sunday, January 4, 2026

徳島県勝浦郡上勝町は、徳島駅から車で1時間ほど内陸部に入った人口2100人ほどの小さな町である。110平方キロメートルという町の総面積のおよそ85%が山林で、他の山間地と同様過疎化が進み、高齢者の割合は65歳以上が住民の47%を占めている。

徳島県勝浦郡上勝町は、徳島駅から車で1時間ほど内陸部に入った人口2100人ほどの小さな町である。110平方キロメートルという町の総面積のおよそ85%が山林で、他の山間地と同様過疎化が進み、高齢者の割合は65歳以上が住民の47%を占めている。

上勝町では、町が主体となり、雇用確保と町の基幹産業である農林業などへの波及効果を狙った、第三セクターによる事業が盛んで、5つの株式会社が設立されている。森林資源を活かすために、温泉へのチップボイラーの導入や、ゴミを3種類に分別して、2020年までに廃棄物をゼロにする「ごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)宣言」、また地域間で競い合って地域振興を図る「IQ競功会」、構造改革特区制度を活用した「有償ボランティア輸送」など、ユニークな試みを次々に実行している。

そのなかのひとつが、同じ森林資源でも「葉っぱ」に注目した新しいビジネスの試み、「いろどり事業」である。このユニークな事業は、地域活性化の成功事例として、新聞等に取り上げられてきたのでご存じの読者も多いだろう。

いろどり事業と株式会社いろどりの概要
いろどり事業は、料理に添えられる「ツマモノ」に使われる紅葉などの葉っぱを、「いろどり」というブランドで町の産業にまで育て上げたものである。現在、売上高は年間2億5000万円。本事業の中核を担うのが「株式会社いろどり」であり、町が70%の株式を保有する官民合同の会社として1999年に設立された。経営には、この事業を立ち上げた元JA職員の横石知二代表取締役副社長が携わる。横石氏の取り組みは、社会起業家関連のアワードなど数々の賞を受賞している。

株式会社いろどりは、マーケティング&セールスで、JAや町と協力しながら「彩ネットワークシステム」として、町の通信同報システムで注文情報を配信する。また、価格情報、出荷情報をデータベース化し、生産者に専用端末を設置して情報提供している。コンビニで使われているPOSシステムの地域版である。

同社は、190名の生産者を組織しているが、文書による雇用契約はなく、パソコンのリース料及び出荷高に応じて支払われる手数料(マージン)が会社の収入源となっている。このビジネスは、「葉っぱ」という思いがけない森林資源を活用しただけにとどまらず、パソコンという情報機器を導入してシームレスで有機的な情報提供=生産管理=出荷という一連のシステムを構築したところが高く評価される。

彩ネットワークシステムの構築により、各生産者は、市場情報とこれまでの出荷価格・出荷量・売上高順位などをデータベースで確認しながら、出荷品目や出荷タイミングを自ら考えることができ、これが生産者の能力トレーニングとなって、全体の組織力が向上する。また、ネットワーク内の生産者間の競争が、生産力向上の動機付けとなっている。

高齢化社会のモデル起業
いろどり事業は、高齢者に経済力と生きがいを与えた。一線を退いた高齢者に、自己責任と自己工夫次第で再びお金を稼いでいくことができるという楽しさを発見してもらい、自らが主体になるという意識変革も生まれた。そしてそれが町全体の活性化に繋がった。

このため、上勝町では、税収がアップしながら、老人医療費は大幅に削減され、町全体の人口減少にも歯止めがかかるという好循環が起こっている。地域の活性化のためには、このように、小さくても一つのことでいいから「勝つ」ことから始める必要がある。

上勝町のいろどり事業は、特異な森林資源の活用システムを構築しながら、同時に構成員に意識変革をもたらしていくという地域活性化の有望なモデルであると同時に、来るべき高齢化社会のモデル起業としても大いに注目される。

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