焼却か滅菌か――医療廃棄物をめぐる声の交錯 2003年2月
2000年代初頭、日本社会は感染症への恐怖と環境問題への懸念に揺れていた。1992年、厚生省が血液付着ガーゼや注射針などを「感染性廃棄物」と指定し、厳格な処理が義務付けられた。しかし安全を理由に導入された焼却炉は、やがてダイオキシン問題で地域住民の反発を招き、病院は外部委託に頼らざるを得なくなった。こうした状況下で「焼却か滅菌か」をめぐる議論が広がり、医療現場、処理業者、住民、行政の声が交錯した。医療機関は確実性を重視し焼却を望むが、処理業者は滅菌、炭化、溶融など新技術の普及を訴え、住民は焼却炉による有害物質を拒否した。制度面でも排出者責任の強化や研修制度の整備が進み、専用容器の導入も始まった。技術面では前川製作所の炭化炉「環境神」、小池酸素工業のアークプラズマ�
��融炉「DOMIWS」、日本化鉱の乾熱滅菌装置「トラッシュバスターズ」などが登場し、焼却に代わる現実的な処理手段として注目を集めた。2002年のダイオキシン規制強化を契機に、焼却中心の処理から新技術への転換が本格化した。感染症対策と環境保全、両立を迫られる社会的課題の中で、医療廃棄物処理は「安全と安心のはざま」を象徴する問題となったのである。
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