すすきのでの火事未遂事件―2020年3月のすすきの
2020年3月、札幌すすきので風俗嬢が勤務先のトイレに火を放とうとする未遂事件が報じられた。新型コロナの感染拡大が始まったばかりの時期で、歓楽街は急速に客足を失い、収入が途絶えた従業員が生活苦に直面していた。事件の背景には、経済的困窮だけでなく、社会からの偏見や孤立感が強く影を落としていた。
当時、全国的に「夜の街=感染源」とのイメージが広まり、すすきのも例外ではなかった。札幌市は感染拡大防止を呼びかけたが、生活の糧を奪われた女性たちへの具体的な支援は乏しく、社会的弱者が追い詰められる構図が露わになった。働く場を守るための対策よりも「危険な街」としての烙印が先行し、地域社会のまなざしは冷たかった。
さらに、コロナ禍における風俗業の立場は制度的にも脆弱だった。政府の給付金制度からは除外され、社会保障からも十分に守られない中で、従事者は二重三重の苦境に置かれていた。火事未遂という極端な行動は、そうした追い詰められた心情の表れであり、コロナ禍が女性労働者に与えた精神的ダメージの深さを象徴している。
すすきのでの出来事は、東京・歌舞伎町に集中した注目とは別に、地方都市の歓楽街でも同じように差別や孤立が広がり、人々が声を上げられないまま苦境に陥っていたことを示す痛ましい象徴であった。
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