アフリカ・ガーナのアグボグブロシー地区の電子廃棄物問題 - 2023年11月
ガーナの首都アクラ近郊に位置するアグボグブロシー地区は、「世界最大の電子廃棄物の墓場」として知られています。ここには主にヨーロッパやアメリカから輸入された電子廃棄物が大量に違法投棄され、毎年約500000トンの電子廃棄物が持ち込まれています。廃棄された電子機器には、パソコン、スマートフォン、冷蔵庫、テレビといった多様な機器が含まれ、これらには鉛、カドミウム、水銀、アルミニウム、リチウムなどの有害物質が含まれています。現地では、これらの廃棄物が焼却されたり、不適切に分解されたりしており、これにより土壌と水源に深刻な汚染が発生しています。
### 健康被害の実態
アグボグブロシーでは、電子廃棄物から金属や部品を取り出すために焼却や手作業による分解が行われています。特に若者や子供がこうした作業に従事しており、直接的に有害物質にさらされています。鉛の血中濃度については、この地区で調査した約70%の子供が安全基準の5倍以上の数値を示しており、深刻な鉛中毒症状が見られます。これにより、呼吸器疾患、皮膚病、ガン、神経障害、発達障害といった健康問題が多発しています。
### 環境への影響
アグボグブロシーでの不適切な廃棄物処理による土壌と水質汚染は、アクラ市全体にも影響を及ぼしています。地元の水道水にもカドミウムや鉛が検出され、安全基準を超過しています。これにより、飲料水としての利用が制限されるほか、汚染された土壌は農業利用が難しくなり、地域の食糧生産にも影響しています。
### 企業とNGOの取り組み
環境保護の観点から、地元および国際的なNGOが問題解決に向けて活動しています。ピュア・アースとグリーン・アドボカシー・ガーナは、鉛除去プロジェクトや現地での健康リスクに関する啓発活動を行い、影響を受けた家族への支援も行っています。また、電子機器のメーカーであるデルやHPも、現地政府と協力し、廃棄物リサイクル支援プログラムを展開していますが、効果は限定的です。
### ガーナ政府の対応
ガーナ政府は2020年代に入り、電子廃棄物の輸入規制と処理施設の整備を進めています。アクラ近郊には新しい廃棄物処理施設が建設され、リサイクル技術の導入が目指されています。しかし、依然として多くの廃棄物が違法に持ち込まれ、年間5000トン以上の未処理電子廃棄物が環境に放置されています。監視体制が不十分で、規制の実施が課題です。
### 今後の課題
アグボグブロシーの電子廃棄物問題はガーナのみならず、国際的な課題です。電子機器を製造・輸出する企業には責任ある廃棄物処理が求められており、リサイクルプログラムの強化も必要とされています。
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