**海面水温の上昇と漁業への影響 - 2007年5月**
2007年5月、日本周辺海域の海面水温が過去100年間で顕著に上昇していることが報告されました。特に、冬期の海面水温の上昇が漁業や食糧生産に重大な影響を及ぼしていることが明らかになりました。
1. **海面水温の上昇**:
日本周辺の海域では、年平均の海面水温が0.7度Cから1.6度C上昇しています。この上昇率は世界平均の1.4倍から3.2倍に達しており、特に北日本の日本海中部(北緯40度から42度の間)での上昇が顕著です。冬期(1~3月)には、釧路沖でも2.2度Cの上昇が観測されており、この温暖化が生態系に与える影響が注目されています。
2. **漁業への影響**:
和歌山県紀南地方の沿岸では、マサバ(真鯖)の漁獲量が減少し、ゴマサバ(胡麻鯖)の漁獲量が増加しています。和歌山県水産試験場の調査によると、4月~9月にかけての海水温の上昇が、ゴマサバの生息環境に適していることが原因とされています。1993年までは水深100mでの水温が15度C台だったものが、1995年には16度C台に上昇し、これに伴いゴマサバが増加しました。2002年以降はさらに17度C台となり、2005年には和歌山県のサバ全体の漁獲量の80%をゴマサバが占めるようになりました。
ゴマサバの市場価格はマサバに比べて低いため、漁業者にとっては経済的に厳しい状況が続いています。また、青森県では、冬期の海水温上昇によりマコンブの生育範囲が狭まり、ノリ養殖にも悪影響を及ぼしています。津軽海峡では「磯焼け」現象が進行し、寒流系の海藻が減少して暖流系の海藻が増加するなど、生態系全体への影響が懸念されています。
3. **生態系への広範な影響**:
瀬戸内海でも海水温の上昇が報告されており、ノリ養殖への打撃は甚大です。特に冬期に赤潮が発生するケースが増えており、これが水産業に与える影響は深刻です。海水温の上昇は漁業のみならず、日本の食糧自給率にも影響を及ぼす問題であり、地球温暖化が生態系に与える影響の一例として広く認識されています。
このように、海面水温の上昇が漁業に与える影響は甚大であり、今後の漁業政策や温暖化対策の重要な課題として取り組むべき問題となっています。
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