FRP廃船処理技術の進展-1995年4月
FRP(繊維強化プラスチック)廃船に関する技術や状況について、詳細を以下にまとめます。
背景
FRPは、30年前から漁船やプレジャーボート(モーターボートやヨットなど)に広く使用されてきました。現在、日本国内には約30万隻のプレジャーボートと10万隻以上の漁船があり、その多くがFRPで作られています。しかし、これらの船が廃棄される際、不法投棄が問題化しています。特に、1994年には全国で1,573隻の不法投棄船が確認され、そのうちFRP船が618隻(約40%)を占めました。
処理技術の進展
1. 三菱重工の技術
三菱重工は、FRP漁船などの廃棄物を処理するための技術開発を進めています。同社は、1992年から広島研究所でFRP廃船のガス化処理技術を研究し、1994年には下関造船所に1日2トンの処理能力を持つ試験プラントを設置しました。この技術は、700℃前後の低温で加熱し、樹脂だけをガス化してガラス繊維を残す仕組みです。この方式は、焼却時に有害物質を発生させず、炉の損傷を防ぐため、環境に配慮した処理が可能です。
2. 異業種交流グループの取り組み
下関市の異業種交流グループも、低公害で低コストなFRP廃船処理装置を開発しました。この装置は、エンジンやスクリューなどを取り除くことなく、船を丸ごと焼却できる点が特徴です。装置の構造は、1次燃焼室で600℃前後の低温燃焼を行い、発生した有毒ガスを2次、3次燃焼室で完全燃焼させる仕組みです。残ったガラス繊維は道路舗装材などに再利用され、金属部分はリサイクルされます。
法的および規制の動向
1996年には、環境管理・監査の国際規格「ISO 14000」が発行され、船舶やその関連メーカーにも環境管理の責任が厳しく追及されることが予想されます。現在、FRP船は一般廃棄物(プレジャーボート)と産業廃棄物(漁船)に分類されていますが、特に漁業用FRP廃船の処理対策が急務とされています。
まとめ
FRP廃船の処理は、技術的な進展とともに、環境への影響を最小限に抑えるための重要な課題です。三菱重工や下関市の異業種グループによる技術開発は、この課題に対する有効な解決策を提供しており、今後のFRP廃船処理において大きな役割を果たすことが期待されています。また、ISO 14000の規格に伴い、さらに厳格な環境管理が求められることになるでしょう。
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