Friday, March 28, 2025

音の神話譚 レッド・ツェッペリン興亡記(1968年〜1980年)

音の神話譚 レッド・ツェッペリン興亡記(1968年〜1980年)

レッド・ツェッペリンは1968年にイギリスで結成された伝説的なロックバンドで、ハードロックやヘヴィメタルの原点を築いた存在として、音楽史に不動の地位を持っています。バンドのメンバーは、ボーカルのロバート・プラント、ギターのジミー・ペイジ、ベースとキーボードのジョン・ポール・ジョーンズ、そしてドラムスのジョン・ボーナムという4人で構成されています。彼らはブルースやフォーク、クラシックの要素を大胆に取り入れ、神秘性と重厚さを兼ね備えた独自の音楽世界を創り上げました。

バンド結成のきっかけは、ヤードバーズ解散後にジミー・ペイジが新バンドを構想し、優れた音楽家たちを集めたことに始まります。当初は「ニュー・ヤードバーズ」として活動を始めましたが、やがて「鉛の飛行船(Lead Zeppelin)」という冗談めいた名前が提案され、それがスペルを変えて「Led Zeppelin」として定着しました。彼らはロンドンで数回のリハーサルを経て、わずか30時間程度でデビューアルバムを録音。その驚異的なスピードと完成度の高さは、音楽界に衝撃を与えました。1969年のデビューと同時に、彼らの名は一躍世界中に知られることになります。

彼らの代表曲のひとつである「Stairway to Heaven(天国への階段)」は、静謐なアコースティックギターの導入から始まり、次第に壮大なハードロックへと展開する構成で、神秘的な歌詞とジミー・ペイジの名演によってロックの金字塔と称される楽曲です。「Whole Lotta Love」は、重低音のギターリフとセクシャルな歌唱、そしてサイケデリックな中間部が特徴的で、アメリカにおける商業的成功の大きな要因となりました。「Kashmir」は中近東風のメロディと圧倒的なグルーヴを特徴とし、旅や幻想をテーマにした壮大な作品で、バンド自身も最高傑作と認めています。

「Immigrant Song(移民の歌)」は北欧神話に着想を得た疾走感ある楽曲で、冒頭のロバート・プラントのシャウトがバンドの象徴的なサウンドとして知られています。また、「Black Dog」は不規則なリズムと力強いギターリフ、ボーカルと演奏の掛け合いが独特で、演奏技術の高さが際立つ一曲です。

1976年に発表された「Achilles Last Stand(アキレス最後の戦い)」は、レッド・ツェッペリン後期を代表する約10分を超える壮大な作品です。ギリシャ神話の英雄アキレスをモチーフに、運命や戦い、再生をテーマにしています。この曲は、ロバート・プラントが交通事故で大けがを負い、車椅子で録音に臨んだという背景があり、その苦難の中で生み出された壮絶なエネルギーが音に表れています。ジョン・ボーナムの圧倒的なドラム、ジミー・ペイジの多重録音によるギターアンサンブル、そして緊張感に満ちた構成は、バンドの創造力の極地とも言える名演です。

しかし1980年、ジョン・ボーナムが急死。メンバーたちは「この4人でなければレッド・ツェッペリンとは言えない」として、バンドは正式に解散を発表しました。その後も数回の再結成ライブは行われたものの、伝説の4人による完全な復活はありませんでした。

レッド・ツェッペリンは、単なるロックバンドという枠を超えて、音楽そのものを神話に変えた存在として語り継がれています。その革新性、芸術性、そして圧倒的な演奏力は、今なお多くのミュージシャンに影響を与え続けています。

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