Sunday, March 30, 2025

鼓と未来のあいだに——仙波清彦が鳴らし続けた変奏の旅路(1960年代〜2000年代)

鼓と未来のあいだに——仙波清彦が鳴らし続けた変奏の旅路(1960年代〜2000年代)

仙波清彦は邦楽囃子方「仙波流」宗家の家に生まれ、3歳から鼓を学び、10歳で歌舞伎の舞台に立つという早熟な音楽家である。伝統的な打楽器の技を身につけながらも、1970年代には東京藝術大学で邦楽を学びつつ、西洋音楽やジャズ、即興演奏にも傾倒。1978年にはフュージョンバンド「THE SQUARE」に加入し、邦楽と現代音楽を横断する革新的な試みを始める。1982年には「はにわオールスターズ」を結成し、矢野顕子や坂田明らと共に、民俗音楽、ロック、テクノ、邦楽を混在させた自由な音楽世界を構築した。

1998年以降は「アジアン・ファンタジー・オーケストラ」を率いて東南アジア各国を巡り、現地の伝統音楽と交流。2000年には「SEMBA SONIC SPEAR」、そして現在は「仙波清彦とカルガモーズ」を主宰し、茶碗やバケツといった日用品も楽器にしてしまう創造的な打楽器表現を追求している。ジャズドラマー村上"ポンタ"秀一との共演では、型と即興、伝統と自由が響き合う名演を残した。代表曲「シシリアン・ルンバ」や「はにわ盆踊り」には、伝統と現代の境界を越える彼の美学が宿る。仙波はつねに「継承ではなく変奏」を信条に、新たな音楽の地平を切り開いてきた。

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