Saturday, March 29, 2025

「自動車メーカー」では現在、易解体性や素材表示などリサイクルしやすい自動車づくりを進めています。しかし、そうした研究が実を結んだ自動車が市場に出回るのは早くても3、4年後になるでしょう。そしてその車が廃車となるのはさらに10年後。2004年施行予定の自動車リサイクル法には当然間に合わず、施行後もしばらくはリサイクルが考慮されていない廃自動車をリユース・リサイクルするためにさまざまな壁が予想されます。

「自動車メーカー」では現在、易解体性や素材表示などリサイクルしやすい自動車づくりを進めています。しかし、そうした研究が実を結んだ自動車が市場に出回るのは早くても3、4年後になるでしょう。そしてその車が廃車となるのはさらに10年後。2004年施行予定の自動車リサイクル法には当然間に合わず、施行後もしばらくはリサイクルが考慮されていない廃自動車をリユース・リサイクルするためにさまざまな壁が予想されます。
自動車に限らず、使用後の処理を考慮していない製品をリユース・リサイクルする場合にもっとも厄介で大きなコスト・マンパワーのかかる工程は分別・分解です。だが、入り口となるこの部分がリサイクルシステムのポテンシャルを左右する最大のポイントになると言っても過言ではありません。
廃自動車のリサイクルシステムでは、それが自動車解体業者にあたります。現在、年間約500万台の廃車が、25%が自動車ディーラー、70%が中古自動車販売業者とモーターズと呼ばれる修理業者、5%が一般ユーザーから発生します。それらはまず解体業者に運ばれ、再利用できるものは抜き出し、以降の再資源化工程に向けて異物抜き取りなどを行います。再利用可能な部品は中古車部品販売業者(パーツ販売業者)に、再利用可能な部品を除いた本体部分は鉄スクラップ処理業者(シュレッダー業者)に渡されるという流れです。
現在、解体業者は全国に約3500社あります。この4〜5年で、中小規模の解体業者の中には、鉄スクラップの下落などを背景に解体をメインではなく、付加価値の高いパーツを商品化して販売するパーツ販売業へと傾いているケースも多いです。今後、自動車リサイクル法も踏まえ解体業者にはシュレッダーダスト発生量の削減に向けた徹底した部品取り・選別、あるいはフロンガスなどの抜き取りといった高度な解体が求められてきます。
そうした中で現在、どういった事業が展開されているのか、大手解体業者の現状と解体業者の主力収入源となる中古部品市場を見てみます。
「月1800台を処理『協同組合長野県中古自動車リサイクルセンター』」
長野県中古自動車リサイクルセンターの主要施設機械 敷地面積:25877平方メートル 建物面積:3189平方メートル 事務室・工場(倉庫含む):1棟 液体抜室:1棟 消火用ポンプ室:1棟 発電施設室(ガソリン用):1棟 廃油・廃液焼却炉兼ボイラー施設:1基 油水分離槽・浄化槽:1式 車両プレス機:1基 フォークリフト:4台
同工場は、車両放置問題や周辺の自動車解体業者が廃車を野積みしていたことなどを機に、長野県内の自動車ディーラー約56社が共同で立ち上げたもので、97年2月から稼動しています。敷地面積7800坪、総工費は設備一式7億5000万円、建物一式5億円。現在、約1800台/月を処理しており、全国でもトップクラスの処理量を誇ります。ゆくゆくは月2000台、年間2万4000台の処理を行う計画で、これは長野県で発生する廃車の25〜30%にあたるということです。
通常、これだけの廃車を集荷するのはひと苦労ですが、ディーラー各社による共同立ち上げのためそれほど苦労はないということです。当初こそ、処理費用が8000円/台とその当時の相場3000円/台に比べ高価だったため集まりが悪かったですが、99年のマニフェスト制度などを機に、今では黙っていても入荷があります。現在の処理費用は、シュレッダー業者への引渡し費用の値上がりもあって処理費として5000円、運搬費5000円、フロン処理2800円の計1万2800円。組合以外の場合、処理費プラス3000円となっています。
同工場の最大の特徴は廃車の移動をすべて台車で行うところです。通常の解体業者はフォークリフトで行っているものを台車方式としたため、作業のスピードアップに加え、廃油などを床面に撒き散らすことも防げます。台車の動力はガソリンへの引火を避けるためエアモーターとしました。また、ブレーキフルード、不凍液、ウインドウォッシャー、フロンガスなどを徹底的に抜き取っているのも特徴です。抜き取った液類は、エンジンオイルとミッションオイルを燃料にした廃油炉の熱で蒸発燃焼させ無害化し、余剰熱は床暖房に使用。フロンガスは千葉の市川環境エンジニアリングでプラズマ破壊処理 (1台当たり約1500円) しています。
一方、異物(ガラス、銅材など)の除去、部品取りに関してはこれからの課題です。銅材(配線など)は取り外してはいるものの全ては取り除いておらず、ガラス部品は部品取りするもの以外は取り外さずそのままスクラップし、シュレッダー業者へと引き渡しています。また、部品取りはエンジン、ミッション、ドア、バンパー、ラジエーター、ショックアブソーバー、ドライブシャフト、ヘッドライトなどを取り外しますが、すべての廃自動車で外すわけではなく、商品価値のありそうなもののみを外します。だぶついているもの、マイナーな車種の外装パーツ、破損パーツはスクラップになるケースが多いです。処理総台数のうち約25%程度の廃車について部品取りをしているということです。
とはいえ、処理費用以外の収入として部品販売収入はコスト低減の要因となっています。取り外された部品は地元の修理工場やディーラー工場に販売されます。またタイヤ160〜170円/体、アルミ材150円/kgのほか、触媒(貴金属)も価値が高いです。現在、鉄スクラップ価格の下落やシュレッダー業者への引渡し逆有償化など周辺環境は厳しいですが、収益(処理費収入、販売収入−シュレッダー、フロン等処理)は1台当たり1万3000円レベルをキープしています。
「フェリーを活用し収集運搬費を抑制『ルネサンス(千葉県君津市)』」
同社は製鉄運輸株式会社が株主となり98年9月に設立、99年4月より営業開始。現在月1000台を処理しています。取り扱っているのは、オークション後廃車となったものなどです。同社の特徴は、運搬費を徴収していないことです。東京湾内、横浜と市川を結ぶフェリーの往路(出荷物)、復路(廃車など)を活用しました。処理費用は、廃車処理費3000円/台、フロン処理1500円/台、その他費用として廃車手続き他1000円に設定しています。
部品取りはエンジン、ミッション、ラジエーター、スターター、オルタネーターなどの動力系部品のみを行い、それ以外の部分は車種の程度、年式によってはまったく外しません。車種や年式の新しいものは各パーツの値段も高くなるため、選別したものを外し中古部品業者などに販売するために部品取りを行いますが、その他はすべてスクラップしています。同社も今後の課題として異物抜き取りや部品取りの徹底が挙げられています。
自動車の解体については、処理費、物流、環境コストなどの面で高いスキルと設備投資が必要であり、法律の強化によってこれらをサポートする仕組みが求められています。現在でも解体業者の収益モデルはリサイクル部品の販売に依存しており、部品の選別と販売先の開拓がカギを握っています。
ただし、業界全体としては自動車メーカーと連携し、リサイクルを考慮した設計や素材選定を進めることが求められます。将来的には、製品設計の段階からリサイクルを考慮するエコデザインが普及し、解体業者の負担を軽減する方向に進むことが期待されています。廃自動車リサイクルの未来は、効率的なシステムの構築とともに、環境保護と資源循環を両立する持続可能な社会の実現に向けた重要な一歩となるでしょう

No comments:

Post a Comment