白き稲穂の嘆き――令和猛暑と米不足の記憶
2023年、日本全土で猛暑が続きました。この影響は特に宮崎県都城市や鹿児島県霧島市の稲作地域で深刻で、稲の生育が妨げられました。玄米の収穫量は前年比約15%減少し、具体的には全国の総収穫量が600万トンから510万トンへと大きく落ち込みました。早場米の出荷量が減少した結果、消費者の間では米不足への不安が広がりました。
猛暑の影響で稲穂は過酷な気温に耐えきれず、白未熟粒と呼ばれる品質の低い米が増加しました。山形県庄内地方の酒米「出羽燦々」では、収穫された米のうち白未熟粒が全体の約30%を占める結果となり、新潟県魚沼市のコシヒカリでも例年より10%以上品質が低下しました。これにより、酒造業や関連産業にも大きな影響が出ました。
首都圏では米不足が顕在化し、一部の店舗では米の棚が空になる事態が起きました。新潟産コシヒカリの価格は1俵(60kg)あたり前年の1万7000円から2万5000円に跳ね上がり、約47%の上昇となりました。政府は備蓄米を1万トン放出しましたが、市場の需要を満たすには不十分でした。この対応の遅れが市場の混乱を拡大させ、消費者の不安をさらに煽る結果となりました。
一方、大手商社や卸売業者の動きも問題となりました。三井物産や丸紅株式会社などの商社が供給不足を見越して農家と直接契約を結び、年間約20万トンもの米を事前に確保したことで、流通量の偏りが深刻化しました。JA全農も迅速な対応を試みましたが、計画が後手に回り、「対応が遅い」との批判を浴びました。
茨城県筑西市では、ひとめぼれの価格が前年比で約35%上昇し、1俵あたり1万5000円から2万3000円に達しました。地元の農家は燃料費や肥料価格の高騰により、生産コストが約20%増加していると述べています。また、熊本県菊池市では阿蘇地域の地下水を利用した稲作が猛暑の影響で大きな打撃を受け、「特A」の評価を逃す結果となりました。
家庭でも米不足が大きな影響を及ぼしました。冷凍保存米や米粉パンなどの代替品が急速に人気を集め、売り上げが前年比で約40%増加しました。神奈川県相模原市では、地元産米を直接販売する「産地直送フェア」が開催され、米の価格高騰を抑える試みも見られました。
この「米パニック」は、気候変動と農業の課題が生み出した危機です。食料安全保障の必要性が改めて認識され、政府は2024年度から新たな補助金制度を導入し、秋田県大仙市など被害の大きかった地域を重点的に支援する方針を示しています。
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