77-上海とマニラ湾の廃水処理の歴史と進展-2020年代-環境問題の解説
### アジアの廃水処理の歴史と進展
#### 1990年代
1990年代、中国の黄河と揚子江では年間240億立方メートル以上の工業廃水が流入し、鉛やカドミウムなどの重金属汚染が進行しました。インドのガンジス川では、毎日1億リットル以上の未処理廃水が流れ込み、周辺住民約4億人に健康被害をもたらしました。フィリピンやインドネシアでは、都市部で処理施設がほぼ整備されていないため、生活排水が直接海に流れ込み、海洋生態系の破壊が進みました。
#### 2000年代
中国は2008年の北京オリンピックに向け、廃水処理能力を飛躍的に向上させ、北京市では毎日300万立方メートルの処理が可能な施設が導入されました。韓国は50%の廃水再利用を達成し、産業用水の大部分を再利用しています。フィリピンでは年間20万立方メートルの処理能力を持つ施設がマニラ湾周辺に設置されました。JICAはインドネシアの処理施設を拡充し、ADBはフィリピンの下水処理インフラ整備を進めました。
#### 2010年代
上海では年間1億5000万立方メートルの廃水を処理する施設が本格稼働し、都市全体の水質改善に貢献しました。ガンジス川沿いではJICAの支援による廃水管理が強化され、カトマンズでは1日95000立方メートルの廃水を処理する施設が稼働し、急成長する都市の需要に対応しています。
#### 2020年代
気候変動による水不足と都市化の進行により、再利用プロジェクトが急務となっています。上海では1日170万立方メートルの廃水が処理され、重金属や化学物質が高度な技術で除去されています。フィリピンのマニラ湾では、年間5000万立方メートルの未処理廃水が海洋に流れ込み、漁業への打撃が深刻です。
ヴェオリア(Veolia)とBASFは、中国とフィリピンで年間200億立方メートルの水を再利用するプロジェクトを推進しています。JICAとADBは、2025年までにインドネシアの廃水処理率を14%から20%に向上させる計画を支援し、持続可能な水資源管理の確立を目指しています。このような取り組みにより、アジア全域で水質の改善と環境保全が期待されています。
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