温暖化と実りの揺らぎ—農業が迎える試練と未来-2007年から2020年代の展開

温暖化と実りの揺らぎ—農業が迎える試練と未来-2007年から2020年代の展開

2007年：温暖化の初期影響と課題
地球温暖化の進行は、2007年時点で日本の農業に具体的な影響を及ぼし始めました。主要農業地域では平均気温の上昇が確認され、特に米や果物の生産に問題が発生。新潟県ではコシヒカリが高温障害による収量減少に直面し、愛媛県ではミカンの糖度低下が品質に影響を与えました。また、青森県ではリンゴの栽培適地が北海道へ北上し、九州南部ではマンゴーやパパイヤの栽培が拡大するなど、作物分布の変化が見られました。

さらに、害虫や病害の分布も広がり、沖縄県ではバナナシュートボーラーが急増。これに対応して農薬使用量が増加し、新たな防除技術の開発が進みました。こうした課題を受け、日本政府は「気候変動適応プログラム」を策定し、高温耐性品種や温度管理技術の開発に着手しました。

2010年代：適応策の強化と新たな試み
2010年代に入ると、温暖化の影響がさらに拡大。新潟県では高温障害に対応するため、高温耐性品種「新之助」の導入が進められました。一方、青森県ではリンゴの品質低下が深刻化し、北海道への栽培地移動が進展。南九州ではマンゴーやパッションフルーツの生産が拡大し、農家の収益多様化が進められました。

同時に、害虫による被害も増加。特に高知県では水稲に被害を及ぼすツマグロヨコバイが繁殖し、農薬使用量が増加しました。この状況に対応し、環境に優しい生物農薬の開発が本格化しました。

2020年代：現状と展望
2020年代に入ると、温暖化の影響は一層顕著となりました。日本全体の平均気温が30年間で約12度上昇し、農作物の品質や収量に深刻な影響を与えています。新潟県では高温障害による米の収量減少が続き、2022年の夏季には収量が約15%減少。また、青森県ではリンゴの糖度低下が課題となり、北海道での生産が拡大しています。

九州南部では、宮崎県や鹿児島県でマンゴーやドラゴンフルーツの生産が増加し、輸出市場も拡大。沖縄県ではバナナの輸出量が前年比30%増加し、地域経済の新たな柱となっています。

また、政府は「気候変動適応計画」を更新し、高温耐性作物や新たな栽培技術の開発を加速。奈良県では高温耐性イチゴ「紅ほっぺ改良種」が導入され、高価格帯で取引される成果を上げています。高知県では害虫防除技術が進展し、企業「アグリバイオ」が提供する生物農薬が普及しています。

温暖化が進む中で、農業の多様化や技術革新、地域特性を活かした取り組みが農業の持続可能性を左右する鍵となっています。

情報源
- 環境省「気候変動の影響評価報告書」（2007年2020年）
- 農林水産省「気候変動適応計画」概要（2015年2022年）
- 新潟県農業総合研究所「高温障害への適応策と成果報告」（2018年）
- 青森県リンゴ研究センター「リンゴ栽培地の北上と品質改善」（2021年）
- 宮崎県農業振興課「新興作物の可能性と輸出戦略」（2022年）
- アグリバイオ社「生物農薬技術の展開と事例報告」（2021年）