海藻が消えた北の海―青森・大間沖と津軽海峡の異変 - 2007年5月
---
青森県沿岸の津軽海峡から大間沖にかけて冬の海で異変が進んでいる。例年であれば厳寒期に繁茂するはずのマコンブやノリが姿を消し養殖業に深刻な影響が出ている。特に津軽海峡では海水温が例年より1〜2度高く植物プランクトンの異常増殖によりノリの「色落ち」現象が多発。養殖ノリは品質低下によって出荷制限を余儀なくされ漁業者に大きな打撃となった。
大間沖では寒流系海藻が減り代わりに暖流系の種類が定着。青森県水産総合研究センターは海藻の減少と「磯焼け」現象の進行を警告しておりとくにホンダワラ類やマコンブの藻場が著しく縮小していることを指摘している。これらの変化は青森県の水温が長期的に上昇傾向にあることとも関連しており1990年代以降冬期の平均水温は徐々に高まっているとされる。
青森県の研究報告『青森県周辺沿岸域の水温の長期変動と海藻類の生産について』では冬の水温が1度高くなるだけでマコンブやエゴノリの成長や分布に大きな影響があるとされており現地の漁業や生態系への打撃は深刻だ。また『青森県水産増養殖研究四十年の歩み』ではこうした変化に対応するため海況観測や海藻類の人工種苗生産の取り組みが進められてきたことも記されている。
寒冷な海が育んできた生態系が今まさに揺らいでいる。津軽海峡・大間沖の静かな異変は全国の海に共通する「海の変調」の先行指標となっているのかもしれない。今後は養殖技術や環境保全の面からも持続可能な対応策の構築が求められている。
---
【関連情報】
- 『青森県周辺沿岸域の水温の長期変動と海藻類の生産について』(青森県産業技術センター)
- 『青森県水産増養殖研究四十年の歩み』(青森県産業技術センター)
- 『平成15年度 青森県水産総合研究センター事業概要年報』
No comments:
Post a Comment