Saturday, April 12, 2025

木質バイオマスエネルギーの利用形態として、日本でも木材を粒状に固めた成形燃料(ペレット)を使う暖房機器、ペレットストーブに注目が集まりつつある。ペレットは取り扱いや燃焼制御が簡単で、一般家庭など幅広いコンシューマーへの普及が見込まれるため、木質バイオマスエネルギー利用の拡大に向けて大きな期待が寄せられている。

木質バイオマスエネルギーの利用形態として、日本でも木材を粒状に固めた成形燃料(ペレット)を使う暖房機器、ペレットストーブに注目が集まりつつある。ペレットは取り扱いや燃焼制御が簡単で、一般家庭など幅広いコンシューマーへの普及が見込まれるため、木質バイオマスエネルギー利用の拡大に向けて大きな期待が寄せられている。

株式会社新栄トレーディングは、すでにペレット、ペレットストーブともに市場を確立し技術開発が進んでいるカナダのエンバイロファイヤー社と代理店契約を結び、日本でペレットストーブの普及を図っている。

「ペレットストーブでゼロエミッション社会を」と同社取締役・ゼネラルマネージャーの伊藤昭夫さんは語る。

伊藤さんがペレットストーブに出会ったのは3年前。当時は経営コンサルティング業を営んでおり、仕事の関係で訪れた米国でのことだった。ペレットストーブは米国やカナダなどで約90万世帯に利用されており、それほど珍しいものではない。米国で十数社、カナダで3社のペレットストーブメーカーがあり、技術開発が進められ、長年にわたってノウハウを蓄積されている。

一方、日本ではペレットストーブはほとんど普及しておらず、国内にも本格的なペレットストーブメーカーはない。ただ、ペレットではなく薪を使った薪ストーブは年間約8000台の市場があり、累計で約40万台が稼動している。しかし、薪ストーブは火力の調整が難しいことや煙の問題、ストーブ周辺への耐熱板などの施工が必要であるといった点から一般の需要が伸びない。特に最近は、ダイオキシン禍により世間が煙に対してナーバスになっており、薪ストーブの需要は先細り傾向にある。 「米国でも最近ではペレットストーブと薪ストーブの導入状況は8対2ぐらいの割合になっている」(伊藤さん)という。

こうした薪ストーブからの代替も含め、日本でのニーズはあると確信し、01年7月に株式会社新栄トレーディングを設立した。設立に先駆け、カナダの大手ペレットストーブメーカー、エンバイロファイヤー社(ブリティッシュ・コロンビア州)と日本総代理店契約を結んだ。エンバイロファイヤー社を選んだのは、ストーブの品質やデザイン性はもちろんのこと、カナダ最西端にあり日本への輸送の便が良いことなどが理由だ。同社へは日本の他社からも日本総代理店を希望するアプローチが頻繁に来始めていたが、「手始めに150台まとめて購入したいという当社のオファーで、こちらの本気度が伝わったようです」(伊藤さん)。ストーブ購入費も含め、会社設立までに5000万円ほどかかったが、01年10月から本格的にペレットストー�
��の販売を開始した。

エンバイロファイヤー社のペレットストーブは、スイッチパネルで手軽に操作でき、内臓された温度センサーで燃焼室へのペレット供給量を細かく自動制御してくれるためエアコン感覚で利用できるのが特徴だ。ユーザーは、ストープ上部の燃料挿入口からペレットを入れ、自動着火装置のスイッチを押し、火力のつまみを合わせるだけ、設定温度に応じてペレットが燃焼室に供給され、ストープ背面から室内の空気を取り込み、暖気を送風口から送り出す。燃焼室と空気を暖める対流プロアーとが別になっており、CO2や排ガスの排出量を定量できるため換気の必要がないのもメリットとなっている。ペレットが燃えた灰はストープ下部にある引き出し型の灰受け皿にたまる。

「部屋の大きさなどに応じてさまざまな機種がありますが、大体18kgのペレットで最大32時間の連続燃焼が可能。ほとんど完全燃焼ですので、灰を掃除するのはひと冬で1回ぐらいです」(伊藤さん) 価格は、最も熱効率の高い「EF3Bi」タイプで煙突、防火敷板、施工費込みで52万5000円。石油ストーブなどに比べれば高価ではあるが、70〜120万円ほどする薪ストーブと比較すると競争力はある。 ペレットは現状では、カナダのものを輸入して販売している(18kgで8000円)。輸送コストがかかるものの、国内ではペレットストープに適したペレットが生産・流通していないためだ。カナダを始め欧米で利用されているペレットは、木の幹およびその部分の木くずを原料とした、いわゆるホワイトペレット。一方、日本で製造されているのはほ
とんどが樹皮ペレット。ホワイトペレットは樹皮ペレットに比べ、発熱効果が高く、残灰率が少ない。また煙や灰の量が少ないのも特徴だ。樹皮ペレットは、高温で燃焼する産業用のチップバーナーやボイラーなどでは使えても、家庭で使われるペレットストープにはあまり向いていない。「日本ではペレットストープが普及していなかったため、これまでホワイトペレットのニーズがなかった。また、高い人件費や急峻な地形、そこからくる間伐材利用の停滞といった日本の林業、山林の現状では、国内産ホワイトペレットはコスト的に外国産ペレットに太刀打ちできないかもしれない。しかし、純国産エネルギー、林業復興地域活性化といったことからすれば当然、国産のペレットを利用したい。ペレットストーブの普及がその�
�び水になればいいなと考えています」(伊藤さん) ●トラブルシューティングに注力 日本で販売するにあたって、電装関係の日本仕様への換装はもちろんのこと、PL法への適合、詳細な取り扱い説明書の作成、輸入してからユーザーに出荷するまでに1台1台解体して、検品するなど、トラブルシューティングには徹底的にこだわった。「これまでも、並行輸入という形で国内でペレットストープを扱っている業者はいました。しかしほとんどが売りっぱなしでした。ようやく出てきたペレットストーブの芽をここでつぶさないよう、細心の注意を払っています」こうした営業努力が実り、同社が扱うペレットストーブに対する認知度、信頼性は高まっています。これまで、最初に購入した150台は売り切り、次に購入した150台もまもな�
��完売の見通しで、近々新たに150台を仕入れる予定です。ユーザーは一般家庭や学校、幼稚園などの教育施設、薪ストーブからの代替のほか、設計事務所からの発注も増えているという。「シックハウス対策で室内空気環境への関心が高まっている中で、建材などだけでなく、室内で使う暖房機器などにも配慮しはじめているようだ」と伊藤さんは分析します。また、一層の普及を図るため、代理店による展開も開始し、2022年12月15日現在で代理店数は全国36社に達し、1都道府県ごとに2社の代理店を目指しています。さらに、2022年秋にはログハウスメーカー大手のピッグフット(東京都目黒区)とも提携し、大きな販売シェアをひとつ確保しました。こうした販売網を通じて、年間1000台の販売が当面の目標です。現状で、トラブルシ�
��ーティングも含め、実際の木質バイオマスエネルギー利用に携わっている件数として同社は国内でも有数といえるでしょう。

木質ペレットひとつとっても、「北米のペレットメーカーのものでも、材質や製造工程によって品質や燃焼性質などが大きく異なる。機器との相性なども考えると実に奥が深い。実際に使ってみて、動かしてみてからわかることもたくさんある」と伊藤さんはその経験の一端を語りました。 こうしたノウハウを活かし、今後はペレットストーブから発展した、ペレット製造プラントや中・大規模の木質バイオマスエネルギー利用プラントの設計、地域における木質バイオマスエネルギー利用システムやビジネスモデルの提案事業も視野に入れています。これからの木質バイオマスエネルギー市場拡大を牽引する1社として、同社の事業は多くの可能性を秘めています。

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