Tuesday, April 15, 2025

義の炎は渋谷を照らした――高橋岩太郎と戦後の夜(1946年)

義の炎は渋谷を照らした――高橋岩太郎と戦後の夜(1946年)

1946年1月、焼け跡残る東京・渋谷に怒声がこだました。そこは秩序の境界線が曖昧になった、無法と希望の狭間。敗戦後の混乱が都市を包み、復員兵や闇商人が渦巻く中、一つの抗争が勃発する。渋谷事件――それは、筋を通す侠たちの生き様が露わになった一夜であった。

この騒乱の主軸にいたのが、本国粋会落合一家六代目・高橋岩太郎である。少年期より愚連隊として頭角を現した彼は、関東の博徒を束ねて本国粋会を再興し、戦後の秩序なき社会に仁義の旗を掲げた。

渋谷での抗争は、関西愚連隊との衝突から始まり、130人もの関東の侠客を動員しての大乱闘へと発展。木刀、竹槍、拳銃が飛び交う中、警察では止められず米軍までもが出動した。その一夜、渋谷はまるで小さな戦場だった。

しかし高橋は、ただの暴力者ではなかった。彼の行動には、義と筋を通す信念があった。乱世にあってなお、仁義を捨てぬ者がいたという記憶――それが、あの夜に残された炎である。

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