砲煙の彼方に見えた国のかたち――日清戦争の戦火を越えて 1894年から1895年

砲煙の彼方に見えた国のかたち――日清戦争の戦火を越えて　1894年から1895年

1894年の秋、遼東半島の先にある要塞都市・旅順は、三日三晩の激戦の末に日本軍の手に落ちた。銃声がやみ、煙が晴れたその街には、崩れた砦と、絶えた命の気配が漂っていた。旅順攻防戦は、肉弾戦と銃撃戦が交錯する壮絶な戦場だった。占領後に発生した虐殺事件は、勝利の陰に深い傷を残した。

同じ頃、黄海の波間では、海戦史に残る大激突が繰り広げられた。黄海海戦では、日本の連合艦隊が清国北洋艦隊の装甲艦に立ち向かい、火線の中で制海権を手にした。海が血に染まり、戦艦が沈む音が黄海に響いた。

そして翌年、戦局を決する最後の舞台、威海衛が包囲される。日本軍は陸と海から総攻撃を仕掛け、ついに北洋艦隊を壊滅させた。指揮官の自決、そして艦の沈没は、清国の敗北を告げる鐘となった。旅順、黄海、威海衛――その三つの戦場に、日本の近代が刻まれていた。