十朱幸代 ― 母性と情の厚さで昭和から平成を彩った女優(1942~)
十朱幸代は1942年生まれ、東京・渋谷出身。高校時代にモデルを経て女優となり、1960年代には松竹映画に登場し清楚で落ち着いた美貌で注目を集めた。当初は気品ある若手女優としての評価であったが、芯の強さを持つ女性を演じることで確かな存在感を示した。映画では山本薩夫監督「戦争と人間」シリーズで社会派作品に挑み、複雑な運命を背負う女性像をリアルに表現し、演技派としての評価を確立した。1970年代半ばにはテレビドラマで飛躍し、1975年の「赤い疑惑」で山口百恵の母親役を熱演。母性愛と苦悩を抱えた姿が共感を呼び、社会現象となった。その後も「赤い運命」「赤い衝撃」など赤いシリーズに出演し、"母親役"の代名詞となった。1987年の大河ドラマ「独眼竜政宗」では伊達政宗の母・保春院を演じ、平均視�
��率39.7%を記録した作品を支えた。続く「春日局」など歴史劇にも挑戦し、役柄の幅を広げた。舞台でもシェイクスピア劇や現代劇に取り組み、ナレーションや執筆活動でも存在感を示した。同時代の山本陽子や岩下志麻が都会的知性を体現したのに対し、十朱は母性と人情味にあふれた女性を演じ、多くの家庭に寄り添った。吉永小百合や松坂慶子と並び、昭和から平成を代表する女優として今も記憶されている。
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