「創造的進化」第3章「生命の意義について」
ベルクソンの『創造的進化』第3章は「生命の意義について」を主題としています。自然、秩序、知性の形成を経て思想が最終段階に至り、生命の意義とは何かが問われます。それは「エネルギーを蓄積し、不定期かつ深く爆発させること」であるとされます。章の終盤では生命過程における本質的なものと偶然的なものが整理され、人間性や身体の生活、精神の在り方へと議論は及びます。すなわち人間はどのような生活を送るべきかという指針が提示されるのです。
この章は「人間の知性とは何か」という根本問題を扱います。動物は本能の世界にとどまりますが、人間は運動機構や物質を外部化し、道具を作り出します。物質には幾何学や論理が内在しており、外部化された物質を用いることで人間は複数の運動機構を再現し、意識に余裕を得ます。その余裕は芸術や直感に向けられたり、科学的加工に活用されたりします。直感は上昇の契機、科学は下降の契機として、いずれも人間の解放に不可欠なのです。
意識が知性化すればするほど物質化・空間化が進みます。ベルクソンは「知性とは何か」を語ること自体が循環論であると指摘しました。今日でいえば人工知能が自己改良を重ねる再帰的過程に似ています。物質と知性は同時に発生し、意識が空間に飛ぶことで物質化が生じ、ものづくりや運動機構の再構築が可能になるのです。ただし物質は生命そのものではなく、再現にすぎません。動物は概念を形成しないため物質を持たず、人間のみが幾何学的空間と直線的時間を認識し、物質を扱う世界に生きています。熱力学の原理すら人間的原理といえるでしょう。
意識は上昇と下降を繰り返します。上昇すれば芸術や直感に至り、下降すれば科学や数学に結実します。生命とは「上昇の際にエネルギーを蓄積し、下降の際に発散する存在」であると要約されます。これは地球に限らず宇宙のどこにでもある運動であり、生命体は必ず存在する、とベルクソンは結論しました。地球に現れた生命の形態は偶然の産物にすぎませんが、生命の可能性そのものは必然であると語られるのです。
さらに人間の特徴は道具を作る能力にあります。動物は単一の運動機構しか持ちませんが、人間は複数の機構を再現し意識に余裕を生じさせます。その余裕を直感に充足させ、知性を直感に回帰させることが人間の進化にとって重要です。科学や数学によって得られた時間の余裕を芸術や直感に振り向け、直感を回復させる生活こそ理想であると説かれます。
こうして『創造的進化』第3章は、物質と知性の関係を通じて生命の意義を描き出しました。生命とはエネルギーの蓄積と発散に尽き、その運動は宇宙普遍の現象であり、人間にとっては科学と芸術の双方を媒介として直感の回復を目指すことが求められるのです。
No comments:
Post a Comment