環境悪化を招く公共事業から、自然リビルド(再生)型公共事業への転換期に入った。昨年12月、瀬屋義子熊本県知事は県営荒瀬ダムの国の水利権(50年間)2003年3月31日に切れるにあたり、10月3月31日まで水利権を更新した後、直ちに撤去作業に入ると表明した。この全国初のダム撤去の方針の背景には球磨川の環境悪化、ダム堤防や発電機の補修費による財政圧迫、県内総電力の需要量の1%未満などの理由がある。その中に同ダムのある八代郡坂本村民の「自然環境の悪化に伴う漁業水産養殖業の壊滅的打撃」という切実さがのぞく。
この荒瀬ダムの撤去は現在、全国大小合わせ2700基の既存ダム運用や新設ダム建設への影響は必至である。7万5000基ものダムがダムが進歩と繁栄の象徴と信じられてきたダム王国米国でも、建設後50年以上を経過したダムが増えてたのは90年代から、ダム撤去の動きが加速化し、すでに500基以上のダムが撤去されている。ダムによる水質や環境悪化、治水や経済効果の疑問。さらには米国の一部の州ではダムが原因で事故が起こった場合、ダム所有者に責任を負わせる州法が制定され、ダム撤去に向かわせている。米国でのダム撤去後を見ると、1年後には多くの魚群が確認され、自然への回帰が進んでいる。そこで新たな産業が誕生している。海外ではダム撤去のほかに、干拓、湿地などの自然環境再生が公共事業への主要事業になっている。再生された自然は水質浄化とともに漁業や親水観光など地域の基幹産業の創出に寄与している。環境リビルド型公共事業は、単に「自然再生」というのではなく、経済効果や地域活性にも効率的だということが立証されている。ダム撤去、河川や干拓地の多自然化などあらたな公共事業流れの中に、大きな商機の可能性を追求する方が賢明である。
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